何日も便が出なくてお腹が張っている、腹痛があるなど、便秘で悩んでいる方は意外と多いのではないでしょうか?ただの便秘と思っても、長期間に渡って症状が出るとQOLも下がってしまいますよね。
でも、たかが便秘と甘くみてはいけません。便秘には隠れた病気が潜んでいることがありますので、医師などの専門家に相談することをおすすめします。
そして、医師の指導とあわせて、毎日のルーティンワークに「便秘体操」を取り入れてみましょう。
便秘体操は、即効性はあまり期待できませんが、自然な排便を促すのに良いものです。用意するものも特にありませんので、気軽に始められます。
今回は、便秘の原因やなりやすい人の特徴などと併せてご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
「便秘」の定義とは
便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分かつ快適に排出できない状態」と定義されています。
回数としては、1週間に3回未満である場合が一つの目安となっています。
ですので、数日便が出ていなくても、量が十分であり、強くいきんだりする必要がなければ医学的に見て便秘とは言いません。
逆に、毎日出ていても、便の量が少なく、強くいきんだり何らかの補助が必要である場合は便秘と診断されることもあります。
便秘の原因は?
便秘の原因は、臓器そのものに問題がある「器質性」と、排便機能に問題がある「機能性」に分けられます。ここでは、便秘の原因を分類ごとに詳しく解説していきます。
器質性
器質性とは、大腸・小腸・肛門など排便に関する臓器に何らかの不具合があり、正常な排便ができなくなっているものを言います。
器質性便秘には、大腸が腫瘍などによって便の通り道が狭くなることで便秘を引き起こす「狭窄性」と、大腸に狭窄はないものの、特徴的な形態変化の見られる器質的な疾患によって便秘を引き起こす「非狭窄性」に分類されます。
① 狭窄性
狭窄性便秘の主な原因には、以下のようなものがあります。
- 大腸がん
- 手術による癒着
- クローン病
- 虚血性大腸炎
初期症状は軽い、または無症状ですが、進行すると強い腹痛や血便、下痢や嘔吐などを起こすことがあります。
② 非狭窄性
非狭窄性便秘は、さらに2つのタイプに分類されます。
(1) 排便回数減少型
十分な排便量がなく、排便回数が少ないため直腸に便が溜まり、腹部膨満感や腹痛といった便秘症状が出るタイプです。
厳密に排便回数の定義はありませんが、週3回未満が目安となります。
このタイプの原因には、大腸の蠕動運動が弱くなり便がうまく運べなくなる「巨大結腸」などが挙げられます。
(2) 排便困難型
排便量、排便回数ともに異常はないのに、排便時に十分量を快適に排出できず残便感を感じる便秘がこれにあたります。
主な原因には以下のようなものがあります。
- 直腸瘤
- 直腸重積
- 巨大直腸
- 小腸瘤
- S字結腸瘤
機能性
大腸には問題がなく、排便機能に何らかの障害があることで便秘症状を引き起こすものを機能性便秘といいます。
機能性便秘は、排便回数減少型と排便困難型、さらに大腸通過遅延型、大腸通過正常型、機能性便排出障害に分類されます。
① 排便回数減少型
(1) 大腸通過遅延型
大腸を通過する時間が長くなることで水分が過剰に吸収されて便が硬くなり、スムーズに排出できなくなるタイプです。腹部の膨満感などが主な症状となります。大腸通過遅延型はさらに細分化することができます。
1.特発性:原因不明のもの
2..症候性:甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、月経や妊娠による女性ホルモンの影響、糖尿病、膠原病、うつ病、便秘型過敏性腸症候群などが原因とされる
3.薬剤性:向精神薬、抗コリン薬、オピオイド系薬などの服薬による影響が原因とされる
(2) 大腸通過正常型
大腸や排便機能には問題なく、排便回数が減少するタイプです。
食事量等が少ないため便の量そのものが少なくなり、排便回数が減少します。便の水分が少なくなることで便が硬くなり便秘症状を引き起こすとされています。
このタイプの場合、食事量や食物繊維不足などによるものが多く、生活習慣を見直すことで便秘症状が改善されることが多いタイプでもあります。
② 排便困難型
(1) 大腸通過正常型
便が硬くなることによる排便困難や残便感があるものは、排便困難型に分類されます。
大腸の蠕動運動には問題がないため、便の水分が十分で柔らかい場合はスムーズな排便ができることが多いタイプになります。
(2) 機能性便排出障害
便排出機能に何らかの問題があり、直腸から十分量かつ快適な排便ができなくなるものを言います。
主な原因は以下のようなものがあります。
- 骨盤底筋協調運動障害(腹筋に力を入れたとき、骨盤底筋の力が弱まる筋肉の連動運動)
- 努責力(いきむ力)の低下
- 直腸感覚の低下
- 直腸収縮力の低下
これらは、加齢等による筋力の低下や、便意を何度も我慢することによる感覚の鈍麻などが原因と考えられます。
便秘になりやすい人の特徴
便秘は男性よりも女性の方がなりやすいですが、生活習慣が乱れている場合も便秘になりやすいとされています。
便秘になりやすい要因として、以下のようなものがあります。
- 筋力の低下
- 食事量の減少
- 黄体ホルモン(プロゲステロン)
- 生活習慣
(1) 筋力の低下
腹筋力が低下すると、腸が重力で下がって便秘になりやすくなります。さらに、女性は骨盤が広くなっているため、大腸が下がりやすくなっているため、便秘になりやすいと言われてます。
さらに、男性に比べて筋力が弱いため、女性の方が便秘になりやすいとされています。
(2) 食事量の減少
食事量が少なくなると、腸の蠕動運動が弱くなり、スムーズに便が運搬されなくなりますし、そもそもの便の量も少なくなるので排便回数も減少します。
若い女性などの便秘には、減量目的で食事量を減らしたことが原因と思われるものもよく見られます。
(3) 黄体ホルモン(プロゲステロン)
女性ホルモンの一種で、月経や妊娠時に多く分泌される黄体ホルモンは、腸の蠕動運動を抑制し、水分や塩分の吸収を促進させるため、便秘を引き起こしやすいホルモンと言われています。
月経期間に便秘になる女性や妊娠・出産時に便秘になりやすいのも黄体ホルモンが関係しています。
(4) 生活習慣
運動不足、朝食抜き、食物繊維不足、喫煙、飲酒は便秘の原因となり得ます。
適度な有酸素運動や一日3食バランスの良い食生活をすること、ストレスを軽減する・適度に発散することなどで生活習慣に由来する便秘症状は軽減されることが分かっています。
特に、車通勤やデスクワークが多い仕事だと、意識して運動しないと運動不足になりやすいので、早朝にウォーキングをしたり、自転車通勤に切り替えるなど日常的に運動する機会を作っていきましょう。
便秘体操で排便をスムーズに!
便通が悪いと感じたら、まずは生活習慣の見直しが大切ですが、それと同時に「便秘体操」をすることをおすすめします。
即効性はありませんが、続けることで便秘解消の一助になると思いますのでぜひ試してみてください。
腹式呼吸
自然な排便を促すため、まずは基本の腹式呼吸を行います。リラックスした状態で行いましょう。
① 仰向けになり、膝を立ててお腹に手を置く
② お腹をへこませるように、口から5秒かけてゆっくり息を吐ききる
③ お腹を膨らませるように、鼻から息を吸う
10回1セットを1日2,3回行います。
腹式呼吸がスムーズにできるようになったら、排便に必要な腹筋を鍛える「ドローイン」をしていきましょう。
① 腹式呼吸と同様、お腹を膨らませるように息を吸う
② 息を吐き、お腹をへこませた状態で1~2回程度軽く呼吸をする
できるようになれば、座ったままや立ったままでもできるよう、トレーニングしていきましょう。
骨盤底筋体操
骨盤底筋を鍛えることで、弱くなった肛門括約筋を収縮させる筋力を鍛えます。
① タオルを筒状に丸めてお尻の割れ目に当たるように座る
② 息を吐きながら肛門を締める緩めるを繰り返す
③ 慣れてきたら時間を延ばしていく
慣れてきたら、仰向けや立った状態での骨盤底筋体操もしていきましょう。
尿漏れにも効果が期待できます。
便秘体操
(1) 排便姿勢
排便時の姿勢は、意外と重要であることをご存じでしょうか。
便座に座ったとき、背筋が伸びるようにまっすぐ座ると、恥骨直腸筋が直腸を引っ張り曲がっている状態になります。こちらはあまり良くない姿勢です。
良い姿勢というのは、膝に肘が付くくらいに前傾になり、かかとを少し上げることで、遅刻直腸筋がゆるみ、大腸から直腸までまっすぐにな状態を作ることです。
こうすることで、便が出やすくなります。
トイレの座面が高く、前傾姿勢をとることが難しい場合は、足元に台などを置いておくとやりやすくなります。
(2) 膝抱え運動
① 太ももの付け根のストレッチ
片膝をお腹に着けるように抱えるのを5秒間、左右5回ずつ行います。
ポイントは、背中を丸めないようにすることと、抱えていない方の膝が浮かないようにしっかり床につけておくことです。
② 背中と腰のストレッチ
両膝を抱えるようにして背中を丸めるのを息を吐きながら5秒間、10回行います。
(3) ねじり運動
仰向けで、両手は横に開いておきます。
両足をそろえて息を吐きながらゆっくり横に倒し、そのまま5秒キープします。
これを左右交互に10回行います。
ポイントは、肩が床から離れないようにすることと、お腹がへこむようにゆっくり息を吐くことです。
便秘予防のためにできること
便秘の原因はさまざまですが、できる限り原因を排除し、健康な排便ができるようにしたいですよね。
便秘予防のために、今日から始められることもあります。ぜひ試してみてください。
まずは生活習慣を整える
便秘で医療機関を受診すると、大腸や全身性の疾患、薬の副作用などでなければ、ひとまず生活習慣やストレスが原因の便秘と判断されるでしょう。
まずは、毎日3食、特に朝食を食べることが大切です。極端な食事制限や偏った食事内容などは便秘になる原因になりますので、バランスにも注意して献立を考えましょう。
朝、時間がなければバナナと牛乳でも構いません。朝食なしにはならないようにしましょう。
排便の習慣を
便意を我慢することはやめましょう。便意を我慢しすぎることで肛門の感覚が鈍くなり、便秘の原因となります。しかし、便意を感じたらトイレに行くというより、朝食後ぐらいに便意を催してトイレに行くのが正しいタイミングといわれています。
1日1回、朝食後にトイレに行ってトイレに座ってみるという習慣をつけると、自然に便意を催すようになる可能性があります。
市販薬に頼りすぎない
市販されている下剤には、刺激性があるものも多いです。処方薬でも刺激性は頓服として使われる程度で、常用するようなものではありません。
使い続けていると、下剤がないと排便できなくなります。
あくまで、腹部の膨満感で苦しい時や腹痛が辛い時など、限定した場合に使うようにしましょう。
ウォシュレットは正しい使い方を
ウォシュレットの水を勢いよく肛門に当てて排便している人もいるかと思います。肛門に水を強く当てることで奥に水が入り、その刺激で排便を促すような使い方を続けていると、下剤と同様、それが習慣になり、ウォシュレットなしで排便するのが難しくなります。
また、水が入ることで直腸を保護している粘膜が洗い流されて傷が付きやすくなる上に、感覚が衰え便意を感じにくくなります。
ウォシュレットを使うときは、水圧は弱に設定し、肛門の外側だけに水を当てて洗うようにしましょう。
便秘で病院に行くのは大げさ?
たかが便秘で病院に行くのは大げさではないか、と気にして病院になかなか行けないという人も多いかもしれません。しかし、放置しておくと危険であることもあります。
ここでは、危険な便秘の症状や病院を受診する際のポイントについてご紹介します。
危険な便秘もあると認識すること
危険な便秘と思われる主な症状は以下のようなものがあります。
- 強い腹痛
- 吐き気
- 発熱
- 血便
こういった症状がある場合、腸閉塞、大腸潰瘍、大腸穿孔、クローン病、大腸がん、直腸潰瘍などの可能性があります。特に、腸閉塞や潰瘍、穿孔は早期の受診が必要です。自己完結しようとせず、必ず医療機関を受診してください。
病院に行くときは
病院に行くときは、以下にあるような質問をされるかと思います。問診票などで聞かれるかもしれませんが、情報が多いので、メモに書いて渡せるようにしておくと伝え漏れがなくスムーズに診察できるかと思います。
- 便秘が始まった時期
- 排便頻度
- 便の量、色、硬さ、形
- 便秘以外の症状(腹痛や発熱)
- 肛門の違和感の有無(痛み、出血、かゆみ、脱出など)
- 残便感の有無
- ウォシュレットを使っているか
- 市販の下剤、浣腸剤を使っているか
- 服薬しているか
- 既往歴
- 利用しているサプリメントや健康食品
- その他思い当たること
薬の副作用も考慮しなくてはいけませんので、お薬手帳も持参しましょう。
まとめ
今回は、便秘の原因や便秘になりやすい人の特徴、予防のための体操などについてご紹介しましたが、いかがでしたか?
筋力やホルモンの関係で、女性の方が便秘になりやすいですが、生活習慣も便秘に大きな影響を与えます。
適度な運動とバランスのいい食事。健康的な生活を送ることが、便秘の解消・予防の第一歩ということですね。便秘体操も取り入れることで、薬に頼らずに便秘を解消することができるかもしれません。
便秘が気になる方は、この記事を参考に便秘体操もチャレンジしてみてください。
ただし、たかが便秘と考えず、まず病院の受診をおすすめします。医師と相談しつつ、改善・予防を目指してくださいね。