身体の不調で悩む人の中には、便秘に苦しむ方もいらっしゃるでしょう。便秘は誰にでも起こりうる状態ですが、女性の方が男性よりもなりやすいとされています。女性が便秘を避けるためには、原因や男性よりもなりやすい理由を理解することが重要です。
そして、便秘には隠れた病気が潜んでいることもあります。たかが便秘と軽く考えず、医師などの専門家に相談することも大切です。
今回は、便秘の原因や種類、そして女性が男性よりも便秘になりやすい理由について説明します。便秘に悩む女性の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
便秘の原因とは
便秘とは、適量かつスムーズに糞便が排出できない状態を指します。
便秘の主な原因には次の3つがあります。
- 大腸機能の低下
- 糞便の水分不足
- 直腸・肛門付近の筋力不足
それぞれ説明します。
大腸機能の低下
便秘の原因のひとつとして、大腸機能の低下が考えられます。大腸機能が低下すると、糞便を運ぶ蠕動運動が弱まり、自発的な排便回数が減少する可能性があります。排便回数の減少によって、次第に排便が困難になり、慢性的な便秘を引き起こしやすくなります。蠕動運動が弱まる要因は様々で
- ストレス
- 内蔵系疾患
- 内服薬の影響
- 排便反射の低下
などが挙げられます。
糞便の水分不足
糞便の水分不足によって便が硬くなってしまい、強くいきんでもうまく排便できなくなることがあります。大腸に流入する水分は食べ物や飲み物、胃腸から分泌される消化液がほとんどであり、これらの水分の大半は大腸を通過する際に吸収されます。大腸内の水分吸収量が適切であれば糞便の硬さも適切になりますが、大腸内に流入する水分が少なければ糞便は硬くなりやすいです。
直腸・肛門付近の筋力不足
直腸・肛門付近の筋力不足によって便を押し出す力が弱まってしまい、腸や肛門付近の筋肉が収縮しにくくなり便秘になりやすくなります。糞便の状態が特別悪い状態でなくても、便意を感じているにもかかわらず、うまく排便できない場合があります。
便秘の種類
ここでは、4つの便秘の分類について説明します。
- 機能性便秘
- 器質性便秘
- 症候性便秘
- 薬剤性便秘
それぞれ説明します。
機能性便秘
大腸の排便機能に障害が生じることで引き起こされ、最も多いとされるのが、この便秘のタイプです。日常のライフスタイルなどの影響で大腸や肛門の働きが乱れ、蠕動運動が弱まることで便意が起こりにくくなります。蠕動運動により糞便は水分を吸収しながら直腸へ運ばれるのですが、この運動の連続性が弱まると、直腸への運搬が困難になり便秘を引き起こしやすくなります。直腸に糞便が運ばれると便意が生じ、肛門括約筋が緩むことで排便が行われます。便意を我慢することで肛門括約筋が緩みにくくなり、便意が起こりにくくなって便秘につながります。
器質性便秘
大腸の疾患や手術後の癒着などの影響で、便の通過が物理的に妨げられることで引き起こされる便秘です。糞便は大腸の蠕動運動によって直腸に運ばれることになりますが、大腸の疾患や手術後の癒着が壁のようになってしまい直腸にうまく糞便が運ばれにくくなります。器質性便秘の場合、適切な治療や施術によって元の病気を治療しなければなりません。
症候性便秘
全身の病気の症状として大腸の蠕動運動が弱まってしまうことで引き起こされ、便秘になりやすくなります。症候性便秘の要因となる病気は、
- 甲状腺機能低下症
- 副甲状腺機能亢進症
などが挙げられます。
神経系の不調で便意を催す反応が鈍くなるので、
- 神経損傷
- 糖尿病の合併症
なども症候性便秘を引き起こす要因となります。
薬剤性便秘
便秘以外の病気で薬を服用している場合、薬剤性便秘を引き起こすことがあります。内服薬によっては大腸の蠕動運動を抑える働きがあるため、副作用で便秘になりやすくなります。処方された薬によって便秘になってしまった場合、一度医師に相談するようにしましょう。
女性が便秘になりやすい理由
ここでは、女性が便秘になりやすい5つの理由について説明します。
- 女性ホルモンの影響
- 筋肉量
- 過度なダイエット
- 排泄環境
それぞれ説明します。
女性ホルモンの影響
男性と女性の違いにおいて、女性ホルモンも便秘の要因の1つとなります。女性が便秘になりやすいのは、女性ホルモンの一種である「黄体ホルモン」が大腸の蠕動運動を抑制するからです。黄体ホルモンは体内に水分を溜め込む働きを促す作用があります。これが多く分泌されることで便から水分を吸収するようになり、便が硬く便秘になりやすくなります。黄体ホルモンが多く分泌されるのは、排卵後から生理前までであり、妊娠4か月に入る頃まで持続することがほとんどです。
筋肉量
一般的に女性は男性よりも筋力が弱く、筋肉量の違いによって便秘を引き起こすことがあります。筋力が弱いことで内臓下垂を引き起こしてしまい、大腸が圧迫されて蠕動運動が弱まる人も一定数います。また筋力が弱いことで腸が圧迫されていなくても蠕動運動が弱まり、便を押し出す力が弱くなることも便秘の要因です。蠕動運動は腹筋の強さに関係しているので、筋力不足によって便秘になりやすくなります。男性と比べて女性が便秘になりやすいのは、筋肉量の違いによる体質の差だといえるでしょう。
過度なダイエット
女性が便秘になりやすい要因として、過度なダイエットも挙げられます。ダイエットの方法は人によって異なりますが、行き過ぎた食事制限を強いる人もいるでしょう。食事量が減ることで腸への刺激が弱くなってしまい、蠕動運動も弱まります。ダイエットによる食事制限によって食物繊維の摂取量が減少することも要因の1つです。摂取する食物繊維量が減少することで、糞便の保水量が十分でなくなり、便が硬くなって便秘を引き起こしやすくなります。ダイエットを行なう際は身体に悪影響となる食事制限に注意しなければなりません。
排泄環境
女性の中には他人と居る時に「便意を知られる」ことに羞恥心を抱き、排便行為を我慢する人が少なくありません。便意を我慢し続けることによって直腸の反応が鈍くなり、糞便が直腸に溜まっても便意を感じにくくなることで便秘を引き起こすようになります。便秘にならないようにするには、排便行為を我慢しないようにすることが重要です。
便秘の影響
ここでは、便秘を放置することで起こり得る5つの影響について説明します。
- 肌トラブル
- 痔
- 脱肛
- 糞便塞栓症
- 腹膜炎
それぞれ説明します。
肌トラブル
便秘を放置することで糞便が直腸内に溜まり続けることになり、便の腐敗が進んで悪玉菌が増殖します。悪玉菌の増殖は有害物質を発生させて、腸内環境を悪化させる要因となります。発生した有害物質は腸壁から吸収されて血液に流れ込むことで全身に回り、肌にダメージを与えて悪影響を及ぼしかねません。便秘による肌トラブルにはさまざまなものがあり、ニキビや肌荒れなどが挙げられます。スキンケアをしても肌の状態が改善されない人は、便秘による影響かもしれません。
痔
便秘によって糞便が硬くなることで、排便時に肛門を傷付けやすくなります。硬くなった糞便は排便しづらいので強くいきまなければならず、いぼ痔があれば大きくなりやすく出血しやすくなります。肛門の痛みと出血で排便行為を我慢するようになり、痔がますます悪化する可能性もあるでしょう。
脱肛
便秘で繰り返し強くいきむことで痔核の血管が膨れ上がり、次第に肛門外に痔核が押し出されるようになります。本来であれば肛門内部にある痔核が露出した状態になることで、外部からの圧力がかかりやすくなります。座ったりすることで痔核が押し潰されるようになり、耐えがたい痛みを感じることが多くあります。
糞便塞栓症
便秘が悪化することで糞便塞栓症を引き起こすことがあり、指や器具によって糞便を掻き出さなければならなくなります。これは糞便が直腸内に溜まって硬くなることで、いきんで便を押し出そうとしても排便困難な状態です。糞便塞栓症によって腹部に激痛が生じることもあるので、適切な処置を施す必要があります。
腹膜炎
糞便塞栓症が悪化して直腸内に糞便が滞り続けることで、腹膜炎を引き起こすことがあります。便秘の悪化によってまれに直腸内に穿孔(せんこう)が生じてしまった場合には、腹腔内に糞便の細菌が広がってしまう可能性があり、腹膜炎に発展することもあります。腹膜炎が重篤化することによって、腸管虚血症を引き起こしてしまい命の危機に晒される恐れがあります。
日常生活でできる便秘対策
ここでは、日常生活でできる便秘対策を5つ説明します。
- 適度な運動を心掛ける
- 規則正しい生活習慣
- バランスの良い食事
- 定期的に排便を促す
- 身体を冷やさない
それぞれ説明します。
適度な運動を心掛ける
適度な運動を心掛けることで腸の働きが促されるので、便秘対策につながります。腸の働きを活発にすることが目的なので、毎日継続できる程度の運動量に調整することが重要です。運動強度は人によって異なりますが、誰でも継続しやすいウォーキングを取り入れるのがおすすめです。
規則正しい生活習慣
規則正しい生活習慣を取り入れることで自律神経が整うようになるため、規則正しい排便ができるようになります。睡眠時間などの生活リズムが整うことで腸の働きが正常になり、便秘改善につながります。便秘に悩んでいるのであれば、規則正しく、且つ十分な睡眠時間を確保することが重要です。
バランスの良い食事
1日3食バランスの良い食事を摂取することで体内リズムを整えて、胃や腸を刺激して排便反射を促します。食生活において、便量を多くして柔らかくしたいので食物繊維を取り入れるように心掛けましょう。また糞便の水分不足も便秘の要因なので、こまめに水分を摂取するようにしましょう。
定期的に排便を促す
定期的に排便を促すようにすることで、腸の働きが活発になり排便しやすくなります。定期的にトイレに行き、排便する習慣をつけることで便意を感じやすくなり、便秘対策につながります。食後に便意が無くても意識してトイレに行くようにしましょう。
身体を温める
身体を温めることで大腸の蠕動運動が活発になるので、慢性的な便秘に効果があります。身体が冷えてしまうと腸の働きが弱まってしまい、便秘になりやすくなります。身体を温める方法にはさまざまなものがあるので、自分に合った方法で温めることが重要です。
まとめ
今回のポイントについて、最後にまとめると以下のようになります。
- 大腸機能が低下し糞便の水分不足によって便秘になる
- 便秘は4種類に大別され大腸の排便機能に何らかの障害が発生によって引き起こされる機能性が最も多い
- 女性が便秘になりやすいのは女性ホルモンと過度なダイエットによる影響
- 便秘の影響は肌トラブルなどだけでなく腹膜炎による命の危機の可能性もある
- 適度な運動と規則正しい生活習慣にすることで便秘対策につながる
便秘は、大腸の蠕動運動が弱まり、糞便の運搬が困難になることで引き起こされるものや、何らかの疾患に影響されるものなど要因は様々です。たかが便秘と軽く考えず、まずは医師などの専門家に相談することをおすすめします。
その上で、自分でできる便秘対策では、食生活の見直しや運動などを行い、大腸の蠕動運動を正常にして、水分をこまめに取ることが重要です。
女性が男性よりも便秘になりやすいのは心理的な要因や体質の違いによるものだといえます。便意を催したら我慢しないようにしてください。
日常生活の行動を変えることでも便秘対策は誰でも可能です。継続しやすい運動を取り入れて腸の働きを活発にする食生活を心掛けましょう。