身体の不調を招きかねない便秘。
普段と同じ生活をしているつもりでも、すぐに便秘になってしまう方も多いのではないでしょうか。
排便が正常に行えないと苦痛を感じるだけでなく、例えば肌荒れといった便通とは一見関連性のなさそうな症状を引き起こすこともあります。
また、慢性的な便秘で悩まされている方もいらっしゃるでしょう。
便秘の原因とされている、食生活や生活習慣を見直すことが大切ですが、他にも改善できる方法としてツボ押しがあげられます。
そこで今回は、便秘に効くツボについてご紹介します。
身体の各所にあるとされるツボを刺激することで、内蔵の働きを調整する作用があるとされています。
ツボ押しのいいところは、思い立ったらすぐに実践できるところです。
ぜひ、便秘に悩んでいらっしゃる方は参考にしてみてください。
ただし、便通の問題には隠れた病気が潜んでいることもあるので、心配な時は医師などの専門家に相談することもお忘れなく。
目次
東洋医学から生まれたツボ
便秘に効くツボのご紹介の前に、そもそもツボとは一体どのようなものなのかについて触れておきます。
ツボとは、古代中国で発祥した医学理論である「東洋医学」の中で発展した考えに基づいた、身体の中にある重要な部位のことを指しています。
長い歴史を持つ東洋医学では経験的な知見により、人の身体の内外に張り巡らされた連絡網のような役割をもった「経路」と、その経路上に置かれた要所の役割をもった「ツボ」があるとしています。
つまり、ツボをきめ細かく探ることで、どの臓腑につながる経路に不調があるのか知ることができるのです。
また、ツボは体内のエネルギーを体外に放出させる開口部として考えられていることから、ツボを適切に刺激することで体調を改善する治療点であるともされています。(327)
ツボとは?WHO(世界保健機関)も認める361のツボ
ツボと聞くと、民間療法の一種であったり実体がないものとして扱われやすいですが、効果があるとされるツボの位置は、長年の経験によって積み重ねられたものです。
その効果は世界的な機関であるWHOでも認められており、現在では361箇所のツボがあると定められています。出典:東洋医学経絡・ツボの地図帳 ビジュアル版-WHO認定の361穴をリアルな人体図で図解!! 新星出版社
ツボを押す効果
ツボを意味する言葉を、漢字では「経穴」「阿是穴(あぜけつ)」と書きます。
経穴は身体の内部にある内蔵などに対応した点とし、阿是穴は身体の表面上にある筋肉などに対応した点とされています。
つまりツボを押すことで、それぞれのツボが対応している全身の各部位が活性化し、体調を整える効果があるとされています。
便秘について
理想的な排便は「毎日朝に1回出る」とされています。
朝のうちにスッキリと排便があると、一日身体の調子も良く過ごせるのではないでしょうか。
便秘になる原因には、栄養バランスの偏った食事、運動不足、不規則な生活、ストレスといった様々な要因があります。
また、生活習慣の変化によって、便秘に悩んでいる方もあるとされています。
もしかして「自分も便秘かも知れない」と思った方もいらっしゃるのではないのでしょうか。
ここでは、便秘とされる基準と便秘の種類について触れてみます。
便秘の基準について
便秘とは、本来は身体の外に排出されるべき便が、快適に十分な量を排出できないといった状態のことをいいます。
さらに、便秘である状態によって医療機関で検査や治療が必要と診断された場合は「便秘症」と呼ばれます。
便秘の種類について
便秘は、原因によって4種類のタイプに分けられています。
①直腸や大腸・肛門の機能が乱れが原因の「機能性便秘」
②大腸内の障害物で便が出にくくなることが原因の「器質性便秘」
③ホルモンの働きや甲状腺などの病気が原因の「症候性便秘」
④薬の副作用が原因の「薬剤性便秘」
この中で、最も多いのが「機能性便秘」です。
生活習慣の乱れやストレス、加齢によって腸の動きに異常をきたすことによって引き起こされます。
「器質性便秘」は、潰瘍性大腸炎やクローン病といった疾患や大腸がんの手術による癒着によって、大腸内に障害物ができて引き起こされます。このタイプの便秘は原因となった病気を治すことが先決です。
女性に多く見られるのが「症候性便秘」です。
主な原因として、生理や妊娠によるホルモンの影響が挙げられますが、それにより大腸の動きが弱くなるといった症状が見られます。
他にも、甲状腺機能低下や甲状腺機能亢進症、糖尿病、神経損傷といった病気によっても大腸の動きに異常をきたすことが原因となっています。
普段から薬を飲んでいる方の中にも、便秘で悩んでいるかたもいらっしゃるでしょう。
薬の種類の中には、大腸の動きを弱める働きをするものがあります。
咳止めの薬や抗うつ薬、パーキンソン病などに処方される抗コリン薬には、このような副作用があり「薬剤性便秘」といったタイプの便秘を引き起こします。
ツボを押したら便通が良くなったという結果も!?
東洋医学で発展したツボには、便秘を改善する効果があるのでしょうか。
現在、ツボと便秘の関連性について調べた研究論文は限られているのが実情です。
しかし、山梨県立大学看護部では、ツボを押すことで排便に変化が起こることに着目した研究論文が発表されているので、ここでご紹介します。
研究目的や方法
今回ご紹介する研究では、代替療法のひとつであるリフレクソロジーによる排便の変化を明らかにすることを目的として研究されています。
便秘であると自覚症状がある健康女子(便秘に影響を与える薬剤を摂取していない)で、18歳から22歳の女子大生を対象に研究が行われました。
研究方法は、初日と2週間目の初日にリフレクソロジーを実施し、それ以外の日にち(2日目~7日目、9日目から14日目)は自宅で対象者自身がセルフでリフレクソロジーを行いました。
研究結果
この研究では、対象者の便の回数と排ガス量、自覚的判断による腹部の張りに変化があったかどうかが調べられました。
その結果、リフレクソロジーを実施することで、排便状況の改善に影響を及ぼす可能性が高いことが分かりました。
この結果により、薬に頼らずリフレクソロジーといった簡便な方法で便秘に働きかけることができる可能性が指し示されたと言えます。
即効性が期待できる便秘に効くツボを紹介
手のツボ
便秘に効くとされている手のツボをご紹介します。
手には2つのツボがあり、それぞれ「合谷」「神門」といいます。
お腹の張りが気になる時にすぐ押せる場所になるので、知っておくと便利です。
・合谷(ごうこく)
手の親指と人差し指の付け根の骨が交差する場所の少し前にあるツボです。
押すときは、人差し指側に向かって押すとしっかりと刺激することができます。
頭痛や目の疲れにも効果があるとされています。
・神門(しんもん)
手首の内側で小指側にある少しくぼんだ場所にあります。
自律神経を整える効果があるとされています。
足のツボ
足のツボはお風呂上りなどの時間があるときに、自分で押してケアすることができます。
「三陰交」「足三里」の2か所を覚えておくと良いでしょう。
・三陰交(さんいんこう)
内側のくるぶしの一番高いところに指を4本のせて、ちょうど人差し指があたる場所にあります。
冷えやむくみ、婦人科系の悩みにも効果が期待できます。
・足三里(あしさんり)
膝のお皿の下のくぼみから、外側に指4本分下がったところにあるツボです。
足を元気にしてくれ、胃腸を強める働きがあるとされています。
お腹のツボ
お腹の調子を直接整えてくれる働きを持つのが、お腹のツボです。
「天枢」と「大巨」の2つのツボがあります。
・天枢(てんすう)
おへそから指3本分外側の左右両側にあります。
お腹が緩いときにも効果があるとされています。
・大巨(だいこ)
おへそから指3本分下、さらにそこから指3本分外側の左右両側にあります。
食欲不振や整腸を改善させるとされています。
背中のツボ
自分ではなかなか押せないのが背中のツボですが、家族に頼んだり、ツボ押し棒を使って刺激してみましょう。
「便秘点」「大腸兪」の2つのツボがあります。
・便秘点(べんぴてん)
肋骨の一番下の骨から指2本分下の背中側にあり、背骨を中心にして指4本分の左右の外側にあります。
名前の通り、便秘を改善させる働きがあるとされています。
・大腸兪(だいちょうゆ)
腰骨の脇に両手親指をあてて、背骨の方に動かしていき、両手の親指が背骨に当たったところから指2本分外側にあります。
大腸を含む内臓の機能を整える効果があるとされています。
ツボ以外にも日頃の生活習慣を見直して毎日快便に
便秘の改善方法として、便秘に効くとされるツボをご紹介しましたが、それ以外にも見直しておきたいのが普段の生活習慣です。
食生活について
食生活では、便を柔らかくするするために水分をしっかりと取るように心がけることが大切です。
また、食物繊維を適切に摂取することで便秘が改善することが多いとされています。
食物繊維には、便を柔らかくする「水溶性食物繊維」と便の量を増やして腸を活性化させる「不溶性食物繊維」の2種類があります。
どちらの食物繊維もバランスよく食べることが大切です。
排便習慣について
排便習慣を整えるために、まずは一日3食を規則正しく食べるようにしましょう。
朝食後はトイレに行くようにすると、段々と排便習慣が整うようになります。
また、規則正しい生活を心掛けることで自律神経が整うことでも、規則正しく排便できるように改善されていきます。
温水洗浄便座について
便秘を解消する目的で温水洗浄便座を利用している方は要注意です。
温水をお尻に当てて、排便を促すという使い方を続けていると、刺激がないと排便しにくくなってしまったり、お尻の周りの皮膚が荒れてしまうことにつながります。
運動について
適度な運動も便秘改善には必要とされています。
運動をすることで、腸に刺激が与えられて働きが活性化します。
市販薬や漢方について
市販薬や漢方には様々な種類があります。
便秘に対して即効性を求めるのか、徐々に効果が得られるものを求めるのかで選ぶものが異なります。
便秘の症状以外にも冷えや胃腸が弱いといった他の症状も気になるときは、体質を改善してくれる働きのある漢方を選ぶといいでしょう。
市販薬の場合は、即効性を求めるなら下剤が含まれている種類、穏やかな効果を求めるなら含まれていない種類と使い分けができます。
いずれも薬剤師と相談しながら自分に合ったものを求めてください。
まとめ
東洋医学で発展したツボは民間療法として扱われており、便秘に効果がある可能性を示唆する研究が大学などで行われています。便秘に効果的なツボは、手に合谷や神門があり、さらに足、お腹、背中にもいくつか存在します。ツボの位置を把握しておけば、便秘が気になる際にすぐに活用できるため、ぜひ参考にしてみてください。
また、ツボを押す以外にも、食生活や排便習慣の見直しをすることで便秘になりにくい体質に変えていくことも大切です。