「免疫が低下すると、風邪をひきやすいって本当?」
私たちの身体をウィルスなどの外敵から守る「免疫」は、身体や心のコンディションによって影響を受けます。免疫が下がると風邪などの感染症にかかりやすくなるのです。
こちらの記事では、免疫が低下する原因を紹介します。ついついやってしまう免疫を低下させてしまう習慣を改善し、免疫の高い身体づくりをすることが健康への第一歩です!
ぜひ、参考にしてみてください。
目次
身体を守る2つの免疫
自己の細胞とそうでないものを見分け、病気にならないために、その原因から身体を守る体内のシステムを免疫と呼んでいます。免疫のシステムが身体にとって異物と判断するのは主に次のものです。
- 外部から体内へ入り込んだウイルス
- 寄生虫(ぜん虫など)
- 体内で発生してしまうがん細胞
- 移植された臓器や組織
身体を守る上で重要な役割を果たす免疫には、大きく分けて4つの種類があります。それぞれの特徴を紹介していきます。
自然/基本免疫
自然免疫(基本免疫)とは、元々私たちの身体に備わっている免疫のことです。私たちの身体にウイルスなどの異物が入り込まないように体表面にバリアを作っており、免疫が低下すると、このバリアが弱まってしまうので感染症にかかりやすくなります。
自然免疫は異物を食べて破壊する細胞免疫で構成されており、マクロファージ、好中球、樹状細胞などが含まれます。
身体に異物が入った際に一番最初に対処するのが自然免疫であり、体表面バリアの要でもあります。入り込んできた異物がどんなウイルスなのかを解析するのも自然免疫の役割で、そこから獲得免疫に情報を伝達します。
獲得免疫
獲得免疫とは体内に入ってきたウイルスなどを攻撃し、その情報を元に抗体を作る働きをしています。獲得免疫は、自然免疫におけるバリア機能をかいくぐって体内に入ってしまった異物の処理を行います。体内に異物が入ると獲得免疫は爆発的に数が増えて、異物処理を行います。
- ウィルス(抗原)を記憶する
- ウイルスに感染した細胞を破壊する
- ウイルスを元に抗体を作る
ここで産生された抗体には次の5種類があります。
- 侵入異物を中和・破壊(IgMとIgG)
- 異物の粘膜からの侵入を阻止(IgA)
- マスト細胞からのヒスタミン放出し、くしゃみなどを起こし異物の粘膜への接着を防ぐ(IgE)
- 初期抗体(IgM)から、より効率の良いIgGやIgAなどを産生される過程で一時的に見られる、試作の抗体(IgD)
さらに獲得細胞は「細胞性免疫」と「液性免疫」と分けられるため、詳しく解説していきます。
細胞性免疫
細胞性免疫は、主にT細胞によって出来ている免疫細胞です。体内に入ってきた異物を破壊したり、ウイルスに感染した細胞の破壊を主に行っています。
<獲得免疫に含まれる代表的なT細胞>
- ヘルパーT細胞:感染した細胞を一早く発見し、そこで闘うマクロファージを活性化するなどして、他の免疫細胞を助けます。
- キラーT細胞:病原体に感染した細胞を見つけると、その細胞ごと破壊し排除します。
- 制御性T細胞:他の免疫細胞に攻撃の終了を指令することで、免疫反応を抑制する
上記3種を中心に、細胞性免疫と呼ばれています。
液性免疫
液性免疫は、主にB細胞によって出来ている免疫細胞です。体内に入っていた異物がどんなものであるのかを把握して、その抗体を作ることに長けています。
自然免疫の中のマクロファージから情報を受けて、それを元に抗体を作っていきます。現在の異物の対処から学習し、次に異物が入ってきたときの対処もするので、だんだんと自然免疫は強化されていきます。
<獲得免疫に含まれる代表的な液性免疫>
- B細胞:抗体を作ったり、侵入した異物が危険かどうかを判断することで、抗原を排除する
- 形質細胞:B細胞が成熟した細胞で、抗体を量産し、抗原を攻撃して自然免疫を助ける
- メモリーB細胞:抗原の情報を記憶する
上記3種を中心に、液性免疫と呼ばれています。
免疫が低下する原因6選
「免疫力が下がっていたから風邪をひいた」は、実感をお持ちの方もいるでしょう。私たちの身体を守る防御システムである免疫は、身体に何らかの負担がかかると下がってしまうことがあります。通常であれば撃退できるウイルスも、免疫が下がっていると感染してしまうという恐れがあります。
ここでは、免疫が低下する原因を紹介します。
睡眠不足や過睡眠
大学生の睡眠時間と風邪の関係を調べた実験が行われました。風邪をひく回数が免疫の指標として検討されています。6,478名を対象に行われた実験のその結果、睡眠時間が6時間以下の短い人ほど風邪をひきやすいことがわかりました。さらに10時間以上の人も風邪をひきやすい結果が得られたことから、睡眠時間は短くても長くても免疫を低下させる可能性があるということです。
運動不足
適度な運動は、感染に対する免疫力を強化するという科学的根拠が増えつつあります。
なお、激しい運動やトレーニングはNK細胞やT細胞の数や機能を弱め一時的に免疫を下げると考えられているので、運動の強さには注意して取り組む必要があります。
食生活の乱れ
免疫力を一定に保つためには、栄養バランスの良い食事が大切です。特にビタミン類は免疫に深く関わっているため各ビタミンが免疫に果たす役割を見てゆきましょう。
ビタミンC
- 白血球(好中球、リンパ球、食細胞など)の産生、機能、活動
- NK細胞の活性
- 抗体の増殖、など
ビタミンD
- 免疫細胞の増殖とサイトカイン産生の刺激
- 単球からマクロファージへの変化
ビタミンA
- 自然免疫バリアの正常化
- 自然免疫細胞の正常な機能維持
- T細胞・B細胞の機能の正常化と抗原に対する抗体作製
ビタミンE
- 樹状細胞の成熟と機能の制御
- T細胞由来の機能とリンパ球の増殖促進
ビタミンB6
- サイトカイン産生とNK細胞の細胞障害活性の増強
- リンパ球の増殖・分化・成熟
- 抗体産生
ビタミンB12
- NK細胞の機能維持
- Tリンパ球産生の増強
葉酸
- NK細胞の機能維持
- 抗原に対する抗体反応
免疫に影響する栄養素はビタミンだけではありませんが、これらのビタミン類が不足しないよう気をつけてください。もし普段の食事だけでは自身が無い方は、サプリなども活用して、バランスの整った食事内容を心がけましょう。
ストレス
ストレスがかかると自律神経や内分泌系、免疫にも強い影響が生じます。リンパ球やマクロファージ、顆粒球、NK細胞などの機能が低下し、感染への防御や、免疫の監視機能が低下することが分かっています。
飲酒・喫煙
飲酒と喫煙も免疫低下の大きな原因のひとつです。
アルコールはリンパ球に直接作用して免疫力を低下させてしまいます。その影響で感染症に弱い状態になり、結核にかかりやすくなることが知られています。
喫煙は免疫を低下させ、心疾患、脳血管疾患、咽頭や肺などのがんや糖尿病などの疾患リスクを上昇させると考えられています。また、これらの疾患は、禁煙することで低下することも明らかにされています。
加齢
人は老化によって免疫の機能は低下していきます。具体的には、マクロファージ、好中球といった自然免疫系細胞の割合が増加し、T細胞、B細胞のような獲得免疫系の割合が低下してきます。つまり、生まれた時の状態に近づいていくということです。
睡眠不足が原因の免疫低下
私たちの身体の防御システムのひとつであるIgAは、睡眠時間によって数が増減すると考えられています。
IgAは以下の中に存在します。
- 血流
- 粘膜からの分泌物(涙や唾液など)
- 初乳(出産後、母乳がつくられるまでの数日間に分泌される)
睡眠時間と唾液中の免疫の関係
睡眠時間が減少すると、唾液中のIgAの濃度が極端に低下します。IgAの濃度が低下するとウイルス感染しやすくなると言われているため、眠っている時の唾液の量、そして唾液に含まれるIgAの濃度が重要であると考えられています。
適正な睡眠時間
大学生205名を対象に、睡眠時間と唾液中のIgAの関連を調査したところ、睡眠時間が6~8時間のところが最も多く分泌されていることがわかりました。ついで9時間以上、最も低かったのは5時間以下でした。
運動不足が原因の免疫低下を防ぐために
運動不足によって起きる免疫低下について、さらに詳しく紹介していきます。
「健康のために運動をした方がいい」ということはよく聞きますが、運動は免疫に大きく影響することがわかっています。
適度な運動をすると血行が良くなる他、免疫を構成する好中球やリンパ球などが増加し機能が高まるので、免疫の効果を高めることが出来るのです。
適正な運動時間と量
健康増進のための適正な運動時間と量について紹介します。
年齢や体調などにもよりますが、健康増進のための運動量は、例えば、普段あまり運動習慣のない方であれば、週3〜5日、軽〜中程度を自覚できるくらいの強さで、1日あたり20〜30分程度の有酸素運動がすすめられています。特に重要なのは、長期的に行うということです。
運動しすぎも免疫低下の原因に
適度な運動が免疫を上げる一方、過度な運動をしている人は免疫が低下する傾向にあります。アスリートなどは免疫が低いことで有名ですので、運動をしすぎないように、適正な運動をしっかりと続けることを意識しましょう。
食生活が原因の免疫低下を防ぐために
食生活の乱れが免疫低下につながります。免疫の仕組みは複雑で、体内の各組織での連携が重要なことから、バランスの良い食事が求められます。
免疫に必要な栄養素
免疫の効果を高めるために必要な栄養素は、
- タンパク質
- 食門繊維
この2つが重要です。
免疫の構成要素の1つである抗体は、B細胞によって作られるタンパク質です。そのため、タンパク質が不足していると正常な免疫機能が働きません。健康な身体にはタンパク質が非常に重要です。
また、食物繊維は腸内環境を整える善玉菌のエサになる成分です。免疫力の70%は腸内細菌から生み出されていることから、免疫と腸内環境には密接な繋がりがあります。よって、食物繊維を多くとることで免疫を高めることが出来るということです。
水分をしっかりと取る
粘膜免疫は、水分が多く含まれている粘膜にウイルスなどの異物を張り付けて体内に侵入するのを防ぎます。そのため、乾燥していると粘膜免疫の働きが低下してしまいます。
1日に1.5L~2Lくらいをゆっくりと飲むイメージです。コップ1杯200mLとして考えると、2時間に1回は水分補給をする必要があります。
粘膜のはたらきを高める食材
粘膜免疫を高めるためには、粘膜を維持するのに必要な栄養素を摂取する必要があります。
- タンパク質
- ビタミンA、B1、B2、B6、C、
- 亜鉛
- パントテン酸、など
にんじん、かぼちゃ、ブロッコリー、刺身類、オリーブオイルなどの油類、納豆、里いもなどを積極的に食べるようにしましょう。
自然免疫を高める食材
自然免疫を高めるためには、以下の成分を積極的に取るようにしましょう。NK細胞は腸内環境に影響されることが分かっています。そのためには食物繊維を多く摂るよう心がけてください。その他、昆布、ひじき、わかめといった食物繊維とマグネシウムやビタミンを多く含む食材も積極的に食べたい食材です。
獲得免疫を高める食材
獲得免疫を高めるためには、積極的にタンパク質を摂取したいです。
肉、魚を中心に、大豆・玄米などを取り入れていくとよいでしょう。脂質を減らしてタンパク質を積極的に撮ることが重要です。
ストレスが原因の免疫低下を防ぐために
ストレスは身体に大きな負担をかけ、免疫も低下する原因になります。
- リラックス出来る空間を作る
- しっかり眠る
- ストレスをためないようにストレス解消する
ストレスをためても良いことはないので、溜め込みすぎないように休日はしっかりとリラックスできるように意識するだけでも免疫低下を防ぐことが出来ます。
- 自己評価が極端に低い人
- 真面目で完璧主義な人
- 周囲の目を気にする
- せっかち
- 趣味など楽しみがあまりない
- 交友関係が少ない
こういった人はストレスをためやすい傾向にあるので注意しましょう。
まとめ
今回は、免疫が低下する原因について詳しく紹介しました。
- 睡眠不足
- 運動不足
- 食生活の乱れ
- ストレス
- 飲酒・喫煙
- 加齢
- 遺伝
- ウイルスなどの外的要因
特に、睡眠不足、運動不足、食生活の乱れは免疫に直結するものなので、免疫のレベルを下げないように日常生活を見直すことが重要です。免疫が低下している時は、普段かからないような疾患になることも考えられるので、ストレスを溜め込まず、免疫対策を楽しみながら健康に気を付けていきましょう。