健康診断の血液検査、気になる尿酸値の値はどうでしょうか?
若いころは大丈夫だったのに、齢を重ねるにつれてだんだん数値が高くなっていたり、要注意と言われたり、気になることが増えてきたと感じる人も多いかと思います。
では、尿酸値が高いと何がいけないのでしょうか?
そこで今回は、尿酸とは何か、基本的なことから尿酸値のこと、気を付けたい食べ物や生活習慣などについて詳しく紹介、解説していきます。
目次
「尿酸値」とは?
尿酸値とは、血液中の尿酸の濃度を数値化したものです。
尿酸値が高いことで知られる病気として痛風が有名ですが、病気の早期発見のために健康診断では検査項目に入っています。
ここでは、「尿酸」というものが何なのか、なぜ尿酸ができるのかなどについて詳しく解説していきます。
尿酸とは
尿酸は、簡単に言うと、プリン体が分解されてできる最終代謝産物、つまり老廃物です。
ほとんどの動物は、老廃物である尿酸を体内で分解することができるのですが、人間は尿酸酸化酵素が遺伝的に欠損しており、体内で尿酸が分解できないため、尿や便、汗などで排出するしかありません。上手く排出できなければ体内に蓄積され、結晶化して高尿酸血症や痛風となるのです。
遺伝子を構成しているデオキシリボ核酸(DNA)、情報の伝達をするリボ核酸(RNA)を構成しているプリン体は、細胞の新陳代謝により分解されて尿酸が作られますし、エネルギー代謝の過程で、アデノシン三リン酸(ATP)がアデノシン二リン酸(ADP)に分解される際にも作られます。
こうして体内で産生される尿酸は1日約700mgほどになります。
また、プリン体は、アルコール飲料や様々な食品からも体内に取り込まれ、分解されることでも尿酸が生成されます。
体内の新陳代謝やエネルギー代謝などよって作られた尿酸は、尿や汗、便などから排泄されますが、プリン体が多く作られたり、食べ物からの摂取量が多かったり、腎機能が低下していたりすると、尿酸を上手く排泄できなくなります。
こうして体内に尿酸が蓄積されると、腎機能障害や尿管結石、痛風などの病気を発症することになります。
尿酸値が高いとどんなリスクがある?
尿酸値が高いとどんなリスクがあるのでしょうか?
もっとも考えられるのは、高尿酸血症です。高尿酸血症は痛風になるリスクが高いため、注意が必要になるでしょう。
しかし、尿酸値が高いというだけでは、どのような病気が発症するのか特定することができませんし、先述したように、腎臓や排尿に関連する病気や生活習慣病などいくつか注意して観察しておきたい病気もあります。
大切なのは、健康診断などで尿酸値が高めなことを指摘された場合には、まずは医師などの専門家に相談することです。
それでは、詳しくみていきましょう。
高尿酸血症
尿酸値が異常に高まった状態を高尿酸血症と言います。
体内での尿酸の産生が過剰(産生過剰)になったり、尿中への排泄力が低下(排泄低下)すること、またはその両方(混合型)によって血液中の濃度が高くなることが原因です。
尿酸値が7.0mg/dL以上で高尿酸血症と診断されます。8mg/dL以上か9mg/dL以上になると、腎障害、高血圧、高血糖や糖尿病、脂質異常症、肥満などの合併症を起こす可能性が高まるため、早期治療が望ましいとされています。
日本人は、排泄力が低下するタイプの高尿酸血症になる人が多いと言われ、患者の大半が男性です。
高尿酸血症は全身の病に通じます。尿酸値が高いことから考えられる病気には、以下のようなものがあります。
・痛風
・高血圧
・糖尿病
・脂質異常症
・腎障害
・心血管障害
・尿路結石
この状態を放置すると、動脈硬化も進行させてしまう可能性が高いため、尿酸値が高い場合は早めに対策をしたり、詳しい検査をするのがいいでしょう。
痛風
痛風とは、体内に蓄積された尿酸が結晶化し(尿酸塩結晶)、関節内に沈着することで痛みを生じる病気です。痛風関節炎や痛風発作と言われ、ある日突然、歩けないほどの激痛が起こります。
痛風の特徴や起こりやすい場所は以下のようになります。
症状の特徴 | ・突然の激痛・指の付け根や関節が赤く腫れる・発赤部分は熱を持っている |
痛風関節炎(痛風発作)の起こりやすい場所 | ・足の親指の付け根・足首・足の甲・膝関節・手首・ひじ |
痛みは1週間から10日ほど続き、その後は徐々に治まっていくことが多く、しばらくすれば完全に症状はなくなります。しかし、1年以内に再発し同じような発作が起こる可能性が高いのが特徴です。
痛風発作は、抗炎症薬などを服用すると比較的早く症状が良くなるのですが、発作を繰り返すことで足首や膝関節などの大きな関節まで腫れはじめ、発作の間隔はどんどん短くなっていきます。
発作の間隔が短くなってから、さらに状態が悪化するといろんな場所に結節ができ、腎機能障害や尿路結石などになる可能性が高くなります。
診断は、発作中の関節内に尿酸があることで確実に痛風と診断できますが、専門医であれば通常の検査や症状から診断することが多いです。
似たような症状が出る病気もありますので、症状が出ている場合は自己判断せず、必ず医師の診断を仰ぎましょう。
似たような症状が見られる主な病気は以下のとおりです。
・外反母趾
・蜂窩織炎
・変形性関節炎
・関節リウマチ
・偽痛風
・腰椎由来の下肢症状 など
痛風の危険因子
痛風になりやすいとされる危険因子などは以下のようなものがあります。
遺伝子的なもの | ・男性(30~50歳)・家族歴がある |
生活習慣など | ・肥満・運動不足・過剰な運動・ストレス・肉類や魚介類の過剰摂取・アルコール、甘い飲み物をよく飲む |
痛風患者はほとんどが男性です。これは、女性ホルモンであるエストロゲンの働きが、尿酸の排出を促しているためです。女性でも、閉経後は女性ホルモンの分泌が減り、尿酸値が高くなりやすい状態になりますが、男性より低値を示す場合が多く、7.0mg/dLを超えるまでかなり余剰分があるため、高齢でも男性の方が多くなっているのだそうです。
そして、血縁者に痛風患者がいる場合、遺伝的に尿酸の排泄力が弱い可能性があります。
プリン体を多く含む飲み物や食べ物の摂りすぎは言わずもがな、アルコール自体も、利尿作用で体内の水分を減少させ尿酸値を上げる一因になりますので、摂取量には十分注意が必要です。
気を付けたい食べ物の成分
尿酸値が気になるときに気を付けたい食べ物の成分は「プリン体」と「アルコール」です。
それでは、プリン体とアルコールについて詳しく解説していきます。
プリン体
プリン体は、細胞の核にある「核酸」の主成分で、ほとんどの生物の細胞内に存在しています。
食べ物や飲み物からの摂取と、新陳代謝やエネルギー代謝による産生、グルタミンやグリシンなどから合成されるプリン体は、肝臓で分解され尿酸となり、体内に蓄えられていきます。
体内に蓄えられた尿酸の量が許容量を超えると、高尿酸血症や痛風、さらに悪化すると腎機能障害などの病気を引き起こすことになります。
しかし、プリン体は決して体に悪いだけの存在ではありません。
プリン体は「うま味成分」でもあるため、プリン体を多く含む干物や乾物などはいい出汁になりますし、白子やレバーは濃厚な味わいが楽しめます。細胞核が多いものに多く含まれているので、魚卵(たらこやいくらなど)や細胞数が多いレバーは比較的プリン体が多いとされています。
プリン体の1日の摂取量目安
尿酸値が気になる方は、プリン体の摂取を1日400mgまでとすることが推奨されています。
体内の尿酸は、「尿酸プール」として常に一定量に保たれています。一日に作られる尿酸の量は700mg、それに対し、尿として体外に排泄される尿酸の量は約500mg、その他で排泄するのが200mgということでバランスをとっています。長期的にプリン体のを過剰摂取したことでこのバランスが崩れると、高尿酸血症や痛風などの病気に繋がります。
アルコール
ビールにはプリン体が多く含まれていることは有名ですが、低プリン体をうたった発泡酒なども多数販売されています。
しかし、アルコール自体も尿酸量を増やす働きや、体内から尿酸の排泄を抑制する作用があるため、飲みすぎはご法度です。
もともとプリン体が少ない蒸留酒などの飲みすぎも尿酸値を高めることになります。
アルコールは、1日20g程度、ビールなら500ml缶1本、日本酒なら約1合程度が目安です。
チューハイも、アルコール度数が7%ならレギュラー缶1本、9%ならレギュラー缶2/3程度になります。
週2日以上は休肝日を設けましょう。
プリン体含有量が多い食べ物一覧
プリン体の含有量が多いものを中心に、一部を一覧にして紹介します。
プリン体の含有量は、以下のように分けられます。
300mg以上:極めて多い
200~300mg:多い
50~100mg:少ない
50mg以下:極めて少ない
一覧表では、100gあたりの含有量になります。肉類などはそのまま指標として確認できますし、それ以外であれば、使用する分量でおおよそのプリン体含有量がわかるかと思います。
食事をする際の一つの目安としてください。
分類 | 食品名 | プリン体含有量(100gあたり) |
肉類 | 鶏レバー | 312mg |
鶏ささみ | 154mg | |
豚レバー | 284mg | |
豚ヒレ | 119mg | |
牛レバー | 219mg | |
牛心臓 | 185mg | |
ベーコン | 61mg | |
干物 | 煮干し | 746mg |
マイワシ干物 | 306mg | |
マアジ干物 | 246mg | |
サンマ干物 | 209mg | |
鰹節 | 493mg | |
干ししいたけ | 379mg | |
野菜類 | ほうれん草(芽) | 172mg |
ほうれん草(葉) | 51mg | |
ブロッコリースプラウト | 130mg | |
舞茸 | 99mg | |
えのきだけ | 49mg | |
ひらたけ | 142mg | |
穀類 | 玄米 | 37mg |
白米 | 26mg | |
大麦 | 44mg | |
蕎麦粉 | 76mg | |
薄力粉 | 16mg | |
中力粉 | 26mg | |
強力粉 | 26mg | |
魚介類 | あんこうの肝 | 399mg |
大正エビ | 273mg | |
カツオ | 211mg | |
さんま | 154mg | |
マグロ | 157mg | |
アサリ | 145mg | |
タコ | 137mg | |
ウニ | 137mg | |
たらこ | 121mg | |
明太子 | 159mg | |
豆類 | 乾燥大豆 | 173mg |
納豆 | 114mg | |
乾燥小豆 | 78mg | |
赤みそ | 64mg | |
白みそ | 49mg |
レバーや干物、魚介類は全体的にプリン体含有量が多くなっています。干物は軽いので100gとなると結構な量になりますので、一度100gがどの程度が図ってみるといいでしょう。
豆類では、乾燥大豆と納豆が、野菜類ではほうれん草の芽とブロッコリースプラウト、ひらたけがやや高めという結果でした。
穀類、野菜類、豆類も、すべてがプリン体の含有量が少ないわけではなく若干高いものもあるので、その他の食材と上手く組み合わせて献立を作っていけるのがベストです。
尿酸値を上げないためにできることはある?
尿酸値を上げないために、生活習慣として取り入れられるものもあります。
食事療法とまでいかずとも、少し気にするだけでも変えられることはありますので、ぜひ検討してみてください。
エネルギー摂取量の見直し
肥満もまた尿酸値を高める原因の一つですので、エネルギー摂取量の見直しが有効です。
厳しい食事制限をすると継続するのが難しくなるので、まずはできる範囲でするのがおすすめです。
・プリン体の含有量が多い食品や脂っこい食べ物は食べ過ぎない
・食物繊維を含む食べ物(キノコ類、海藻類)を積極的に取り入れる
水分を十分摂ること
水分を十分に摂ることで尿量を増やし、尿酸の排泄を補助することも有効です。
発汗や下痢で脱水状態だと尿酸値も上昇しますので、気温が高いときや空気が乾燥しているとき、お腹の調子が悪いときは、よりこまめに水分補給をしましょう。
1日2ℓ以上が摂取量の目安です。糖分が多いジュースや牛乳などは避け、水やお茶を飲むようにしてください。スポーツドリンクも糖分が多い飲み物になりますので、運動後でも飲む量には注意が必要です。
適度な運動
適度な運動は、尿酸の排泄とともに肥満予防にも効果的です。尿酸値が高めの人は、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動から始めましょう。
無酸素運動や運動強度の強い運動は、尿酸の産生を促進させます。尿酸値を上昇させる原因の一つですので、軽い程度の運動に留めておくことが大切です。
ストレスを減らす
ストレスも尿酸値が上昇する原因と考えられています。
マウスを使ってそのメカニズムを調査した実験があります。それによるとストレスには、尿酸を増加させるXORという酵素の活性を高める作用があることがわかりました。
また、長期間ストレスにさらされると自律神経の乱れにも繋がります。まったくストレスのない生活を送るのは難しいため、なるべくストレスを貯めない、ストレスを継続させない、上手く発散できるようにすることが大切です。
まとめ
今回は、尿酸値が高いときのリスクやプリン体の含有量が多い食べ物、尿酸値が高めのときに気を付けたい生活習慣などについてご紹介しました。
プリン体はうま味の素であると同時に、尿酸が作られる原因ともなります。尿酸値が気になるときは、生活習慣の見直しでコントロールできる部分もあります。さらに、尿酸値が高くなりすぎないように気を付けることは、生活習慣病や腎機能障害、尿路結石などの病気の予防にも繋がります。
無理をしてストイックな生活をすると長期間続けるのは難しくなるので、この記事を参考に、まずはできる範囲から始めてみてください。毎日の積み重ねが、未来の健康を守ってくれるでしょう。