病名が「風が吹いただけでも痛い」ということに由来すると言われる、痛風。その名の通り、ある日突然、足の親指などの関節が腫れ、鋭い痛みに襲われる病気です。痛風発作の痛みは一度経験すると忘れられないほどと言われ、発作が起きると仕事や歩く事すらできないこともあるようです。
この痛風は30代以上の男性の1%が罹患すると言われています。そして、痛風のリスクが高まる、尿酸値が高い状態、つまり、高尿酸血症になる割合は、成人男性で21%以上、だとされているのです。
非常に激しい痛みに襲われる痛風のほか、さまざまな深刻な病気にかかるリスクを抱える尿酸値のトラブルは、医師の指導が不可欠ですが、そうなる前に日常生活のスタイルに気を配って尿酸値をコントロールすることが何よりも重要です。ここで紹介する有酸素運動は尿酸値が気になる方にはおすすめです。
この記事では、有酸素運動が尿酸値を気にする方におすすめな理由と、尿酸値やプリン体などに関する基本的知識、尿酸値が気になる方におすすめの食事の仕方のヒント、尿酸値対策に関して良くある質問などについて、解説していきます。尿酸値が気になる方には耳寄りの情報となっていますので、どうぞ最後までご一読いただければと思います。
目次
尿酸値を下げるのに有酸素運動が効果的な理由
さまざまな研究により、肥満と尿酸値の上昇には関連があることがわかっています。肥満の人は過食しがちであり、しかも、プリン体を多く含む食品を好む傾向があるため、尿酸値が高くなりやすいのです。また、内臓脂肪の蓄積が尿酸の産出を亢進するという研究結果もあり、尿酸値を下げるためには肥満は避けるべき要因と言えます。
そこで肥満を解消するためには有酸素運動がおすすめです。なかでも、軽めの有酸素運動をするようにしましょう。また、有酸素運動はストレスの発散にも役立ちます。過度なストレスは尿酸値を上げてしまう要因になりうるため、適度な有酸素運動は尿酸値が気になる方は積極的に行うべきなのです。
激しい運動は逆効果
短距離走や重い負荷をかけての筋トレなどの激しい運動(無酸素運動)は尿酸値をあげてしまうことがあります。無酸素運動は呼吸を一時的に止め、急激に力を入れて行うため、体内のエネルギーをたくさん消費することになります。すると、アデノシン三リン酸(ATP)が分解されることなどにより、尿酸が大量に作られてしまうのです。
また、激しい運動をすると筋肉に疲労物質と呼ばれる乳酸が増えます。乳酸が増えると尿酸の排泄機能が下がって尿酸値が上昇してしまったりするのです。さらに、急激な運動などで水分が体内から失われると、血中濃度が高くなり尿酸は溶解しにくくなります。運動をする際には水分を取ることを忘れないようにすることが大切です。
尿酸値についての基本知識
尿酸とはプリン体という物質が肝臓で分解されてできる老廃物です。 1日に生産される尿酸の量は約700mg、尿から排泄できる尿酸の量は約500mgで、残りの約200mgが汗や便から排泄されます。そのため、生成される尿酸の量が増えたり、尿酸を排泄する量が減ってしまうと体内に尿酸が溜まっていきます。体内に溜まった尿酸は血液に溶け出し、血液尿酸が多すぎる状態が続くと、結晶になってしまった尿酸が体内に付着し、痛風をはじめ、さまざまな病気の原因となるのです。
尿酸値の基準値は?
尿酸値は7.0mg/dL以下であれば基準値とされ、2.0mg/dL以下であると低尿酸血症とされます。低尿酸血症は腎臓で行われる尿酸の排出が過剰になった状態です。低尿酸血症では運動のあと、腎障害や尿路結石を起こす可能性が高くなると言われています。
プリン体って?
プリン体とは細胞の核に存在する成分で、穀物や肉、魚、野菜など、ほとんどの食品に含まれています。また、プリン体は私たちの体の中にも存在していて、エネルギー代謝や細胞の代謝や増殖に関わっています。そのため、新陳代謝するたびに細胞の中でプリン体が生まれているのです。人の体の中のプリン体の20~30%は食べ物に由来し、あとの70~80%は体内で作られたものだと考えられています。プリン体は古くなると尿酸として排出されるのですが、尿酸が溜まり過ぎてしまうと高尿酸血症になってしまいます。
尿酸値を下げるのにおすすめの有酸素運動
すでに述べたように、無酸素運動は尿酸値を急激に上昇させてしまうことがあるので、尿酸値が気になる方は軽めの有酸素運動をおすすめします。軽めの適度な有酸素運動をすることはストレスの発散にも役立ちますし、肥満の対策にもなり一石二鳥です。ただし、運動は継続することが大切です。尿酸値対策だけに関わらず運動をすることで得られるメリットは、1日や2日などの短い期間では手に入れることはできません。週3回程度の軽い運動を継続できることが一番です。ゆっくり、楽しく、無理なく続けることができる有酸素運動を選んでみてください。
尿酸値が気になる方におすすめの有酸素運動をいくつか紹介します。
ウォーキング
ウォーキングは尿酸値が気になる方にとくにおすすめの運動です。ウォーキングをする際は息が上がるようなスピードで歩くのではなく、無理のないペースで、脈拍が少し上がるくらいにすると良いでしょう。また、ウォーキングをする時間がない、という場合、通勤などの際にエレベーターやエスカレーターではなく階段を使ったり、バスや電車の駅を1駅分歩くようにする、などの工夫をすることをおすすめします。
ジョギング
尿酸値が気になる方には軽いジョギングがおすすめです。ただし、たくさん汗をかくようなペースではなく、ゆったりとしたペースで走るジョギングをするようにしましょう。
サイクリング
尿酸値が気になる方には軽いサイクリング がおすすめです。ただし、たくさん汗をかくようなペースではなく、ゆったりとしたペースで自転車を漕ぐサイクリング をするようにしましょう。
尿酸値対策には食事も大切
尿酸値対策には食事にも気をつけることが大切です。プリン体を多く含む、レバー、モツ、あん肝、白子、牛肉ヒレ、ロース、かにみそ、エビなどの食べ物は避けるようにしましょう。また、気をつけなければならないのはだし汁です。プリン体は食品を湯煎や電子レンジで加熱すると溶け出しやすく、鶏もも肉、干し椎茸を使っただし汁や、鶏がらスープの出汁にも気をつける必要があります。ただ、プリン体が溶け出しやすいことを逆に生かし、肉や魚を茹で、プリン体の溶け込んだ茹で汁を捨ててから食べるなどの工夫をすれば、尿酸値が気になる場合でも肉や魚を楽しむことができます。
また、牛乳などの乳製品には尿酸を排出する作用が期待できます。牛乳や乳製品にはタンパク質の一種で、カゼインやラクトアルブミンという物質がふくまれています。研究によると、1日に240mL以上の牛乳を摂取すると、ほとんど牛乳を飲まない男性と比べると、痛風発作が46%減少した、とされています。ちなみに、牛乳の代わりに豆乳を飲むという方もいるかもしれませんが、豆乳にはカゼインはふくまれていません。さらに、豆乳は100gあたり22.0mgのプリン体を含み、ほとんど含まれない牛乳に比べると、尿酸値が気になる方には豆乳はあまりおすすめできない、と言えるでしょう。
また、尿酸がアルカリ性の液体に溶けやすい性質を生かし、尿をアルカリ化させる食品を摂取するのもおすすめです。尿をアルカリ化するのを助ける食品の例として、豆類(加工食品を除く)や緑黄色野菜、昆布、果実、芋類などがあります。毎日の献立に積極的に取り入れるようにすると良いでしょう。
また、尿酸値が気になる場合にはアルコールとの付き合い方にも注意が必要です。アルコールは腎機能を低下させて尿酸の排出を阻害させてしまいます。また、アルコールは体内のATPの分解を促進し、その結果プリン体が増えて尿酸として蓄積されてしまうのです。また、アルコールは肥満の原因にもなるため、飲み過ぎには注意しなければなりません。
一般的に、プリン体を多く含むアルコール飲料として広く知られているのがビールです。しかし、ビールがたくさんのプリン体を含んでいるのではなく、一度にたくさん飲まれる種類のアルコール飲料なので、ビールを飲んだ後に痛風発作が起きることがあり、「ビールは痛風の大敵」という印象が定着していると考えます。しかし実は、尿酸値が気になる時に気にするべきなのは、アルコールの種類ではなく、量なのです。ビールであれば中瓶500ml、日本酒であれば180mL、ワインであれば200mL、ウィスキーであれば60mLまでを目安に、飲むようにしましょう。
ここまで、尿酸値対策には食事にも気をつけることが大切であることをお伝えしましたが、極端な食事制限をするべきではありません。たとえば、絶食をしてしまうと、かえって尿酸値が上がってしまう場合があるので気を付けましょう。
良くある質問
尿酸値を下げるための対策を説明する上で、よくある質問にお答えしていきます。
運動は何時間すれば良いの?
尿酸値が気になる方に有酸素運動がおすすめであると述べましたが、生活習慣病全般を予防するための有酸素運動として推奨されるのは、1日トータルで30分以上です。1回数分の運動を合計して30分でもいいのですが、できれば20分以上継続した運動が望ましいとされています。
毎日運動しないといけないの?
これも生活習慣病予防全般に言えることですが、できれば毎日、最低でも週に3回以上行うようにしてください。毎日行うことは健康づくりやストレス解消、シェイプアップとしては非常に良いのですが、まずは無理なく続けることを優先するといいでしょう。とにかく、無理は禁物です。特に尿酸値を気にする方は、激しい運動は尿酸値を高めてしまうことがあるので注意してください。
運動する時間は朝と夜どちらが良いの?
尿酸値が気になる方には軽めの有酸素運動が必要なのですが、その運動をするべき時間帯というのは特にありません。その人のペースで、できる時に無理なく運動する、ということが1番大切です。ですから、朝するべきか夜するべきか、ということよりも、無理なく、ゆっくり、30分以上の有酸素運動を続ける、ということを最優先で行うことをおすすめします。
まとめ
有酸素運動が尿酸値を気にする方におすすめな理由と、尿酸値やプリン体などに関する基本的知識、尿酸値が気になる方におすすめの有酸素運動や尿酸値を下げるための食事の仕方のヒント、尿酸値対策に関して良くある質問などについて、解説しました。
高尿酸血症になると鋭い痛みに襲われる痛風だけでなく、心血管疾患、脳血管疾患、腎障害などのリスクも高まってしまいます。高尿酸血症が疑われる場合にはまずは信頼できる病院に相談し、投薬などの治療を受けるようにしましょう。そして、この記事にもあるような運動や食事をはじめとして、普段の生活スタイルの見直しも同時に図り、健康な体でいつまでも美味しく、楽しく、生活ができるように心がけていきたいですね。この記事が尿酸値を気する方の参考になれば幸いです。どうか無理なく、健康のための取り組みを継続させていってくださいね。