「尿酸値の値が高めですね」と、健康診断で指摘された事はありませんか?尿酸値が高くなると痛風が起きるかもしれないことは何となく知っていても、そもそも尿酸値が何なのか、正常値はいくつなのか、高くなる原因は何なのかを知っている方は意外と少ないです。この記事では、尿酸値について詳しく理解していただき、より健康な身体になれるポイントを解説していきます。
尿酸値が高くなる原因
尿酸値が高くなる主な原因として2つ挙げられます、1つは産生された尿酸の排泄能力が低下するか、もう1つはプリン体を多く摂取したことにより尿酸が過剰に産生されるかです。プリン体と聞くと、ビールを連想される方もいるかもしれません。確かにビールにはプリン体が多く含まれていると言われますが、プリン体が含まれるのはビールだけではありません。それでは、プリン体が多く含まれる食事とはどのようなものがあるのでしょうか。尿酸とプリン体の関係についても解説していきます。
尿酸とプリン体
まずは尿酸とプリン体の関係について解説します。プリン体とは、あらゆる生物の細胞の核に存在する核酸の主成分のことです。そのプリン体が肝臓で代謝を受け尿酸となります。プリン体は、食品から体内に入るものもありますが、プリン体となる原料は、私たちの身体の中にも元々あるものなのです。体内では細胞が新陳代謝をする時や、身体を動かすエネルギーを作る時にもプリン体が作られます。体内で作られるプリン体の割合は7~8割と言われています。このように体内で合成されたり、食品などから摂り入れられたプリン体は、肝臓で代謝され尿酸となります。その後不要な尿酸は腎臓を経由して尿や便などと一緒に排出されていきます。
プリン体の取りすぎ
プリン体は身体にとって必要なものなので、体の機能に異常が無い限り必要な分は産生されますが、問題が指摘されるのは食べ物などから摂取するプリン体です。摂る量が多くなりすぎると、結果尿酸値は高くなります。痛風が「贅沢病」とも言われるのは、食べ物や飲み物によって過剰にプリン体を摂取するから尿酸値が高くなり、痛風を発症するとされているからです。実際にはそれだけが要因ではないのですが、やはりプリン体を多く含んだ食品の取り過ぎは尿酸値を上げてしまう恐れがありますので、気をつけなければなりません。
食生活の乱れ
先程述べたように、プリン体を多く含んだ食品を取り過ぎると、尿酸値を上げてしまう恐れがあります。逆にプリン体があまり含まれない食べ物としては、豆乳、牛乳、キャベツ、トマト、海藻類、コンビーフ、魚肉ソーセージ、米飯、パン、果物などがあります。これらの食品を意識して摂ることで、摂取するプリン体の割合を少なくできるかもしれません。特に外食や惣菜、お弁当が中心で、食生活が乱れているなと感じる方は気をつけてみてください。
プリン体の多い食事
プリン体の多い食事を具体的にご紹介します。「食品100gあたりプリン体を200mg以上含むもの」は「高プリン食品」とされています。また、1日の推奨されるプリン体の摂取量は400mg以下とされています。
高プリン食品としてはレバー、イワシの干物、白子、カツオ、エビ、あん肝などがあります。あと意外に思われるかもしれませんが、健康食品であるクロレラやロイヤルゼリーなどにもプリン体は多く含まれています。レバーや健康食品など、一見身体に良さそうなものでも、実はプリン体が多く含まれていることがあるので注意が必要です。
プリン体の多い飲み物
アルコールには尿酸値を上げる作用があります。そのため、プリン体が少ないアルコール類を選んだとしても、お酒は尿酸値が高い方にとって危険な飲み物となってしまいます。プリン体を多く含む飲み物といえば、ビールを真っ先に思い浮かべる方が多いと思います。確かに醸造酒は蒸留酒に比べ、プリン体が多く含まれているのでこれは間違ってはいません。また、アルコール類以外では、甘いジュース類も含まれる果糖が尿酸値を上げる作用がありますので、やはりこちらも注意が必要です。
尿酸値の正常値とは
健康診断などの血液検査をきっかけに初めて尿酸値の基準値を気にする人もいるでしょう。それが、正常値範囲内だったとしても、正常値の上限ギリギリでは今後の生活習慣を見直す必要があるかもしれません。尿酸値の正常値を知ることは、病気を未然に防ぐ第一歩です。正常値を把握し、ご自身の尿酸値が現在どのレベルにあるのかをぜひ確認してみてください。
男女ともに7.0mg/dLが目安
尿酸値の基準値は男女ともに7.0mg/dl以下が目安です。検査値の中には男女によって正常値が異なるものもありますが、尿酸値については男女共通して7.0mg/dl以下が基準値とされています。もしも、尿酸値が7.0mg/dl以上であれば「高尿酸血症」と呼ばれます。なぜ7.0mg/dl以上を異常値とするのかと言うと、7.0mg/dl以上では血液の中で尿酸が結晶化しやすいからです。尿酸値が高くなって引き起こす病気は、多くがこの尿酸の結晶化によるものとされています。だから結晶化してしまう可能性が高くなる7.0mg/dl以上というのが異常値とされているのです。
健康診断が再検査の場合は病院へいく
多くの方は健康診断などで血液検査を行い、初めて尿酸値が高いことを指摘されることと思います。血液検査で異常が見つかった場合、特に再検査となった場合は病院を受診することをおすすめします。尿酸値が高いからと言って、すぐに病気に繋がることはまれですが、長期間尿酸値が高いままでは様々な病気を発症するリスクが高まります。そのため、血液検査で異常が見つかった時に適切に対処することで、それら病気を予防することができます。ぜひ、今は何も症状がないからと放置せずに、病院を受診するようにしてください。
尿酸値が高いと病気の原因になる
尿酸値が高いと様々な病気の原因となります。また、尿酸値が一度高くなると例え正常値に戻ったとしても、今まで一度も高くなったことがない人と比べると、尿酸値は高くなりやすい傾向にあります。
先程も述べた通り、尿酸値が高い状態が続き、尿酸が結晶化することが痛風や腎臓病を引き起こします。次からは、尿酸値が高くなると起こる病気について詳しく解説していきます。
尿酸値が高くなると起こる病気
尿酸値が高くなると起こる病気として、皆さんよくご存知なのは痛風ではないでしょうか。痛風を発症する人が身近にいる方は、そのあまりの痛そうな姿に「絶対なりたくない」と感じていらっしゃることでしょう。しかし、尿酸値が高くなると起きる病気は痛風だけではありません。実は腎臓病や尿路結石といった病気まで引き起こす可能性があるのです。
なぜそのような病院が起こるのか、病気の概要を正しく理解していきましょう。
痛風
痛風は、血液に溶けきれなくなった尿酸が結晶化することにより引き起こされます。尿酸の結晶はまるで針の様に尖っています。その結晶が関節に溜まり炎症を起こし痛風発作という痛みを引き起こします。この痛みは痛風という名前の通り「風が当たるだけでも痛い」と言われ、動かすこともままならない場合があります。そして特に足の親指の関節など、小さな関節から発作が起きることが多いですが、進行すると肘や膝関節などの大きな関節にも発作が起きることがあります。
この症状は1週間から10日程でおさまるとされていますが、治療をせず放っておくと、発作の間隔が短くなったり症状が重くなることもあります。
生活習慣病
生活習慣病と高尿酸血症は、鶏と卵の関係です。生活習慣病を発症しやすい方というのは、メタボリックシンドロームであったり尿酸値が高くなりやすい素因を持っていることが多いです。重ねて、そういった方は暴飲暴食をしてしまう方が多く、それも高尿酸血症の原因となります。また、高尿酸血症の方は生活習慣病を合併している例が多く、その因果関係は否定することができません。すなわち高尿酸血症だけ、生活習慣病だけ、と片方だけを治療するのではなく、両方を並行して治療する必要があります。
痛風腎
尿酸値が高いことで、腎臓病を引き起こすことがあります。尿酸値が高くなり過ぎ、血液中に溶けきれなくなることによりできる尿酸結晶が、腎臓に溜まることがあります。これを痛風腎と言います。痛風腎が進行してしまうと、腎臓の機能が低下し、最悪の場合透析となってしまうこともあります。また、尿酸は腎臓を経由して排泄されるため、腎臓の機能が落ちるとますます尿酸値は上がってしまいます。この負のループを断ち切るためにも、早期に適切な治療を行うことが重要です。
尿管結石
尿酸値が高いことで、尿路結石を引き起こすことがあります。
尿酸は腎臓から尿へと排泄されます。しかし排泄されるべき尿酸が多すぎると、尿の中で結晶を作ってしまいます。その結晶でできた石によって、尿が通る道を塞いでしまうのが尿管結石です。尿管結石によって尿がせき止められ、腎臓内に圧がかかることで激しい痛みが起きます。そのあまりの痛さに、救急車で病院を受診する患者さんもいる程です。尿管結石は石が無くなるまで何度も繰り返すことがあります。大きな石の場合は、手術の適応となることもあり、悪化すると腎臓の機能が低下してしまう病気です。
痛風結節
高尿酸血症の状態が続くと、関節周囲の骨だけでなく、関節周囲の皮膚にも尿酸結晶が沈着します。
そうしてできた尿酸結晶の硬いかたまりが痛風結節です。放置していると、痛風結節が破綻して尿酸結晶のかたまりが皮膚を突き破って排出されることもあります。さらに、痛風結節を放置していると、関節が変形し可動域が狭まり見た目も大きく変わってしまうことがあります。
尿酸値をコントロールするための方法
尿酸値が高くなることで発症する病気についてご紹介しました。できることなら先程ご紹介したどの病気にもかかりたくないことでしょう。そこで、ここからは尿酸値をコントロールするための方法をいくつかご紹介します。尿酸値が高めと知っているなら、医師の指示に従い適切な治療を受けることがもちろん大前提ですが、ご自身でも少し生活習慣を見直すことで尿酸値を下げやすくできます。ぜひ参考にしてください。
肥満を解消する
肥満体型の方は、標準的な体型の方より尿酸値が高くなりやすいということが分かっています。また、先ほども解説した通り、肥満と高尿酸血症、生活習慣病は相関関係があると言われています。肥満を解消することによって、高尿酸血症や生活習慣病を改善することができます。
適度な運動を心がける
適度な運動は肥満を解消し、ひいては高尿酸血症を改善する効果が期待されます。しかし、尿酸値が高めの方は運動の方法についていくつか注意が必要です。一つは強度の強すぎる無酸素運動はかえって尿酸値を高くしてしまう恐れがあるという点です。これは運動する時に使うエネルギーを生み出す時に尿酸が産生されるからです。尿酸値のコントロールには有酸素運動が推奨されています。
そしてもう一つは水分不足になると痛風発作が起きやすくなるという点です。これは水分不足になると相対的に血中の尿酸濃度が高くなり尿酸結晶ができやすくなるからです。これらの点に気をつけながら、ぜひ運動に取り組んでみてください。
栄養バランスを整える
プリン体を多く含む食品、あまり含まない食品については先程解説した通りです。プリン体を多く含む食品を摂取し過ぎないことはもちろん重要ですが、暴飲暴食を避けて栄養バランスを整えることも大変重要です。それは尿酸を高くする原因となる肥満を解消するには、食事の内容改善が有効であるからです。プリン体摂取量の制限、肥満解消の両面から栄養バランスを整えた食事生活を送ることが大切です。
水分を多くとるようにする
運動の項目でも解説したように、水分不足になると相対的に血液中の尿酸の濃度が高くなります。尿酸の濃度が高くなると尿酸結晶ができやすく、痛風を発症する引き金となります。また、尿酸は腎臓から排泄されるため、水分不足で腎臓に流れる血液の量が下がってしまうと、排泄される尿酸の量も少なくなってしまいます。痛風発作を起こさないように、尿酸を身体の外に排泄するためにも意識的に水分を摂取することは重要です。
ストレスを溜め込まないようにする
強いストレスを感じると、尿酸値が上がることが知られています。その仕組みを解明したマウスの実験があります。それによるとストレスは、XORという尿酸を産生させる酵素の活性を上昇させるということです。ストレスがXORを活性化させた結果、尿酸値が増加すると考えられています。
激し過ぎる運動や食事制限は時に大きなストレスとなります。また、日常的にストレスを感じる環境にある方は、健康のためにも息抜きが必要です。ストレスを管理することも健康を維持するためにも大変な重要なことだと意識して、日常生活を送るように心がけてください。
牛乳を飲む
尿酸値を下げるのには牛乳が良いと聞いたことはありませんか?アメリカで行われた12年間に及ぶ大規模な研究によって、牛乳やヨーグルトなど乳製品を多く摂取したグループは、摂取していないグループに比べて痛風の発症リスクが低いという結果が出ています。
肉や魚の摂取量が多いほど痛風の確率が高まり、乳製品を摂る量が多いほど確率は低下することがわかりました。
まとめ
尿酸値の正常値、尿酸値が高いと引き起こす病気、対策方法について解説しました。尿酸値は高くても自覚症状がありませんが、様々な病気の引き金となりご自身の健康を損なってしまいます。今回ご紹介した内容をぜひ覚えていただき、尿酸値を正常値にキープして健康を維持し続けてください。