足のむくみは、よく見られる症状で、比較的誰もが経験する身近なものです。しかし、その原因は様々で、いくつかの要素が関わっていることが多く、重大な病気が隠れていることもあります。どの科にかかればいいのか迷うこともあるでしょう。
また、高齢者では原因がなくても足がむくんでしまうということは珍しくありません。それでは、足がむくまないようにするには、どのように予防すれば良いのでしょうか。
この記事では、足のむくみがどうして発症するのか、症状や原因、解消や予防方法などを解説していきます。
目次
足のむくみとは
足のむくみを経験したことがある人は少なくないでしょう。仕事で立ちぱなしだった、オフィスでずっと座っていたなどの原因でむくみは発症します。
むくみに気が付くのは、夕方になると靴下のゴムの跡が残っていたり、靴を脱いでからしばらくしてまた履こうとした時など、足に違和感を感じるときです。
足のむくみとはどのような状態か
むくみのおこる要因の一つとして、血液の流れがあります。心臓から送り出されて血液は末梢に到達した後、静脈に入り心臓に向かって流れていますが、長時間のデスクワーク・立ち仕事・運動不足・病気などが原因で、血液の流れが滞ると血液中に水分が溜まります。
そうなると、血管内の圧力が高くなり、血液中の水分である組織間液が血管外へ押し出されてしまい、静脈内にはなかなか再吸収されなくなるのです。この染み出てしまった水分がむくみとなると言われています。
足のむくみの症状は
足のむくみが起こると、慢性的に足がだるい、午後になるとブーツが履きにくい、朝起きても足がむくんだままであるなどの症状が見られます。
足のスネを手の指で押してへこませると、へこんだまま戻らない状態になり、そのような場合はむくみと判断します。一時的なむくみの多くは、両方の足に起こり、朝はむくみが軽減していますが、夕方から夜にかけてひどくなる場合がほとんどです。
足のむくみの原因
一時的な足のむくみには、血液の流れの滞りから起こるものがありますが、その多くは、生活習慣から生じる場合が多いでしょう。
ここでは、主な原因について解説しますので詳しく見てみましょう。
塩分の摂りすぎ
塩分を過剰摂取すると、食塩中のナトリウムが水分を体内に貯め込むため、むくみの原因になります。通常の食事内容であれば塩分が不足することはありませんが、日本人は塩分の摂取量が高いレベルにあり、摂りすぎてしまっていると考えられます。
味が濃く塩分が高い食べ物を摂取しすぎると、水分が欲しくなり、過剰の水分摂取にも繋がってしまうでしょう。
低栄養
血中のアルブミン(たんぱく質)が低下することで、膠質浸透圧が下がると血管の外に水分が漏れやすくなります。食事が十分に摂れない、または腸や腎臓からたんぱく質が減少してしまう病気などを発症している場合には、むくみが起こりやすくなります。
血液検査などでたんぱく質を計測し、低い値の場合は栄養管理が重要になります。
薬剤からの副作用
薬剤の中には、服用することで、その副作用からむくみが生じる場合もあります。主なものとして、向精神病薬、高血圧の薬、糖尿病薬、甘草を含む漢方薬などがあげられます
姿勢によるもの
長時間の立ち仕事や、座ったままの姿勢を続けている場合は、どうしても足がむくみで腫れてきます。看護師や長時間飛行機に乗っている乗客などが当てはまります。
足のむくみや腫れが見られる病気
むくみの原因が病気である場合も少なくありません。むくみや腫れが全身に起こる場合や、足だけなど局所的な場合とさまざまです。心臓・腎臓・肝臓・血管・リンパ節・内分泌系などの病気が原因で起こるのが特徴です。
ここでは、足のむくみや腫れが見られる病気について解説します。
下肢静脈瘤
足から心臓への血液の流れを支える静脈の弁が壊れると、下肢静脈瘤が起こります。40歳以上の女性に多く、ホルモンや出産が影響すると言われています。
症状は脚の血管が浮き出ることから始まり、痛みやだるさ、こむら返りが生じ、さらに皮膚炎や潰瘍も発生します。
全ての下肢静脈瘤がすぐ治療が必要というわけではなく、症状がなければ様子を見て、減量、運動、脚を下げる時間の短縮、弾性ストッキングを使って症状を和らげられます。症状が悪化した場合は、手術治療を考えます。
エコノミークラス症候群
車や飛行機などの狭い座席に長時間座ることが原因で、血栓ができ、肺などの血管がつまるおそれのある疾患です。
長時間足を動かさないことで、足の血管に血栓ができると血液の流れがさらに悪くなります。この血栓をそのまま放置すると、立ち上がったときなどをきっかけに血栓が静脈を通って肺に達し、呼吸困難に至るなど、命に関わる場合もある危険な病気です。それがエコノミー症候群と言われている「深部静脈血栓症」です。
初期症状は、大腿から下部の足に発赤・痛み・腫脹などの症状があります。
予防するためには、ときどきストレッチ運動を行なったり、ゆったりとした服装でシートベルトなどをきつく締めすぎないことの必要です。かかとの上げ下げ運動をしたり、ふくらはぎを軽く揉むことでもかまいません。
足のむくみが気になり水分を控えるのではなく、十分にこまめに水分を摂りましょう。できれば、アルコールや喫煙も控えてください。
変形性足関節症
足首の関節にある軟骨が損傷して炎症が起こり、足首の腫れが起こる「変形性足関節症」は、足首の痛みが主な症状になります。
起床後や、長時間座ったあとの動き初めの関節のこわばりや、関節の腫れや痛み、骨がこすれ合う音や感触があるのが特徴です。
運動・足への負担を軽減するための減量・休養・痛みを抑えるための投薬など、様々な治療を組み合わせて管理していきます。
痛風
痛風は高尿酸血症が原因で、関節に尿酸がたまることで炎症や痛み、腫れを引き起こします。特に足の親指が痛むことが多いです。痛風を引き起こす要因の1つはアルコール摂取で、尿酸値を上げる作用があります。
痛風対策としては、食事で適切なエネルギー摂取を心掛け、プリン体が多い食べ物を避け、水分をたくさん飲むことが大切です。また、適度な運動を行い、特に有酸素運動がおすすめです。
特にアルコール摂取には注意が必要で、どの種類のお酒でも適量を守ることが重要です。生活習慣を見直すことで、痛風の予防や症状の改善が期待できます。
急性腎障害
急性腎障害とは、腎臓が血液をきれいにする力が急に弱くなる病気です。初めに、体重が増えたり、足や顔、手がむくんだり、尿の量が減ったりします。病気が進むと、疲れやすくなったり、食欲がなくなったり、吐き気やかゆみが出たりします。さらに悪化すると、胸が痛くなったり、けいれんが起きたり、息切れがすることもあります。重い場合は早急に治療が必要になります。
食事の管理では、塩分やカリウムを少なくして、水分の量も調整が大切です。タンパク質やリンが多い食べ物も避けるようにします。
心臓の病気
心不全は、心臓が血液を送り出す力が弱くなる病気で、息切れやむくみが起こります。原因は心筋梗塞や高血圧、弁膜症、心筋症などさまざまです。
心不全になると、酸素や栄養が足りなくなり、息切れや疲れやすさが現れます。足がむくんだり、体重が増えたりすることもあります。
心不全の薬物治療では、水分を抜く利尿薬や心臓を休める薬が使われます。生活習慣の見直しや食事療法も大切です。
心不全は症状が良くなったり悪くなったりする病気なので、上手に付き合っていく必要があります。大切なことは、① 薬を続けること、② 食生活に注意すること、③ 自己管理を行うことです。心不全の初期症状が現れたら、専門の医療機関を受診しましょう。
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、糖尿病が主な原因で、蛋白尿を伴う病気です。つまり、糖尿病があり、腎機能が低下している状態です。
糖尿病により血管障害が起こると、腎機能の低下が徐々に進み、やがて尿蛋白が現れます。さらに進行し腎不全になると、腎臓の代わりに人工透析が必要となり、生涯治療を続けることになります。
むくみなどの症状を見逃さず、早期発見が透析を避ける秘訣となります。
足のむくみの解消・予防方法
むくみの解消ポイントは、血液やリンパ液の流れをスムーズにさせることです。ご紹介するのは、日常でも取り入れやすい解消・予防方法ですが、ウォーキングやリンパマッサージなどは有効であると言われています。
血液やリンパ液を滞りなく流し、余分な水分や老廃物が留まることなく、汗や尿として排出することを促していきましょう。自分に合った方法を見つけてむくみを解消してください。
長時間同じ姿勢でいることを避ける
長時間同じ姿勢でいると、足の血液がうっ滞します。日頃から同じ姿勢でいることが多い場合は、むくみが出やすくなります。
同じ姿勢でいることを避けるように意識し、歩いたり簡単な体操をしたりするなど心がけましょう。
食事の塩分制限
食生活では、塩分の制限が重要です。塩分を摂りすぎると、身体の中に水分を貯め込んでしまうため、心臓に負担がかかり、血管障害を起こします。
むくみを解消したい、予防したいと思うときは、塩分制限に努めましょう。
塩分を摂取しすぎてしまった場合は、カリウムを多く含む野菜や果物を摂ると、ナトリウムの排泄を促すことができます。
カリウム摂取
カリウムは、ナトリウムの尿中排泄を促すため、塩分の摂取量が比較的多い日本人にとって、摂取することは大切です。カリウムは細胞内液の主要な陽イオンで、体液を決定する重要な因子であると言われています。
多くの食品に含まれており、健康な人においては、多量の発汗や下痢、利尿剤の服用の場合以外で、カリウムを欠乏することはまずありません。腎機能が正常で、カリウムのサプリメントなどを使用しない限りは、過剰摂取になるリスクも低いと考えられています。
しかし、カリウムは、むくみに関連するナトリウムとの摂取比などが関連する心血管病リスクにもかかわっており、腎機能に病気や異常がある場合は、摂取量に注意する必要があります。
医師の指示で薬の服用
服用している薬による副作用が原因である場合は、薬を変更することでむくみは軽減されます。服用している薬が原因でむくみが発症したと考えられる場合は、医師の指示に従いましょう。
まとめ
足のむくみは、比較的よく見られる症状ですが、いろいろな疾患が原因であることも多く、心臓や腎臓、糖尿病などが関連する場合もあります。一時的でなかったり、なかなか改善されないという場合は、医療機関を受診し検査を行なってください。
また、治療後も再発の可能性はあります。治療時に受けた生活上の注意点などを守ることが何よりも大切です。その上で、むくみに対する正しい知識を得て、生活の中で実践するようにしましょう。
足のむくみで、気になる症状があれば、血管外科やむくみ専門外来のある病院を受診してみるのもいいでしょう。早めの受診が大切です。かかりつけ医を見つけておけば、今後も何かと相談することができます。