健康診断や特定健診で、血糖値を指摘された…
血糖値は身体の健康状態を測る1つの目安として、健康診断で測定する項目となっています。では、血糖値とは何なのでしょうか?
そこで今回は、血糖値の疑問から目標値、世代別の平均値までわかりやすくご紹介します。また、血糖値が異常値になると起こる症状や合併症についてもご紹介します。
さらに血糖値を下げる食事や運動のポイントについてもお教えしますので、ぜひ日々の生活に取り込んで健康的な生活を送っていただければと思います。
目次
血糖値とは
血糖値とは、血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。
血液1dl(デシリットル)中に含まれるブドウ糖(mg)を「mg/dl」(ミリグラム・パー・デシリットル)という単位で示します。
ブドウ糖は、炭水化物などに含まれる糖質が消化吸収されることによって作られ、血液に入ります。そのため、血糖値は食事の影響を受けやすく食後に上昇します。
血糖値が高くなるとすい臓から分泌されるインスリンというホルモンが働きます。これはブドウ糖を身体の細胞に取り込み、エネルギーとして利用してくれます。こうしてインスリンは、血糖値を下げる役割をしてくれます。
血糖値が高いまま下がらない状態が続くと高血糖と呼ばれます。この状態が続くと動脈硬化を引き起こし、糖尿病などいろいろな病気を発症するリスクがあります。
一方で、空腹になると血糖値が下がります。血糖値が下がるとすい臓から分泌されるグルカゴンというホルモンなどの働きにより、血糖値を正常に戻してくれます。
血糖値が低くなることを低血糖と呼びます。この状態が続くと震えや動悸、脳へのエネルギー不足から意識低下や昏睡に至る場合があります。
血糖値の正常値は(基準値)
それでは、血糖値はどのくらいの数字が良いのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
先に述べたように、血糖値は食事の影響を大きく受けます。空腹の状態で測定した血糖値のことを空腹時血糖と呼び、基準値を100mg/dlとしています。(空腹時とは10時間以上絶食した状態)
また、メタボリックシンドロームの診断基準では血糖値110mg/dl以上を高血糖としています。
HbA1cとは
HbA1cの読み方は「ヘモグロビン・エー・ワン・シー」です。ヘモグロビンはタンパク質の一種で、身体全体に酸素を行き渡らせる働きを担っています。ヘモグロビンは糖にくっつきやすいタンパク質です。とくにブドウ糖にくっついたヘモグロビンの割合のことをHbA1cと呼びます。糖尿病を評価する上で重要な指標となっています。
食事内容や運動・ストレスの影響を受けやすい血糖値と比較して、変動要素があまりないため、過去1〜3ヶ月の平均血糖値を反映できます。糖尿病の血糖コントロール状態を示す有効なデータとなっています。
およそ6%までを正常と判定しています。基本的にHbA1Cを7%未満に維持することが、糖尿病の合併症のリスク低減に有効だと考えられています。
各世代の血糖値の目標値
年齢や世代によって、血糖コントロールの目標値は異なります。この値以上の場合、糖尿病などの病気の可能性があるので、必ず医療機関を受診して下さい。
それでは、詳しく見ていきましょう。
小児期の血糖値の目標値
小児期とは、生まれてから思春期までの期間です。
この時期の血糖コントロールの指標の1つは、以下のとおりです。
- 目標血糖値は早朝、食前で90〜145mg/dl、食後で90〜180mg/dl、就寝時で120〜180mg/dlである。
- 目標HbA1c値は、全小児期年齢で7.5%未満であり、HbA1c値9.0%以上がハイリスク(介入必要)である。
成人の血糖値の目標値
成人期とは、20歳〜64歳までの期間です。
この世代は、仕事や結婚、子育てなどにより生活環境の変化が起こりやすい時期です。
タバコやお酒、運動不足が原因で生活習慣病である糖尿病を最も引き起こしやすい時期であると言えます。成人期の血糖コントロールの指標の1つは、以下のとおりです。
- 空腹時血糖が126mg/dl以下
- HbA1cが6.5%以下
高齢者の血糖値の目標値
65歳以上が高齢期です。高齢者には、心身機能の個人差が著しいなど、さまざまな特有の問題があります。また、高齢者糖尿病では重症低血糖を患いやすいという問題もあります。
高齢期の血糖コントロールの指標の1つは、以下のとおりです。
カテゴリー | 薬の使用 | HbA1cの目標値 |
①認知機能正常かつ②ADL自立 | なし | 7.0%未満 |
あり | ・65歳以上75歳未満7.5%未満(下限6.5%)・75歳以上8.0%未満(下限7.0%) | |
①軽度認知障害〜軽度認知症または②手段的ADL低下、 基本的ADL自立 | なし | 7.0%未満 |
あり | 8.0%未満(下限7.0%) | |
①中等度以上の認知症または②基本的ADL低下または③多くの併存疾患や機能障害 | なし | 8.0%未満 |
あり | 8.5%未満(下限7.5%) |
*ADLとは、日常生活の動作のことです。起きる・座る・着替える・食事をするなどを指します。
妊娠期の血糖値の目標値
妊婦の高血糖は胎児への健康の影響があるため、可能な限り正常に保つ必要があります。
そのため、通常よりも血糖コントロールは厳格に行われます。
妊娠期の血糖コントロールの指標の1つは、以下のとおりです。
- 空腹時血糖が95mg/dl以下
- HbA1cが6.0〜6.5%未満
年齢別の血糖値の平均は?
年齢別の空腹時血糖値の平均は、以下のとおりです。
年齢 | 血糖値の平均(mg/dl) | |
男性 | 女性 | |
20〜29歳 | 91.2 | 91.8 |
30〜39歳 | 90.3 | 89.8 |
40〜49歳 | 94.5 | 95.6 |
50〜59歳 | 100.3 | 94.6 |
60〜69歳 | 112.6 | 102.6 |
70歳以上 | 117.0 | 109.5 |
平均値 | 107.4 | 100.9 |
30歳以降から、血糖値は上がり始める傾向があります。
また、男性の方が女性より高い傾向にあります。
糖尿病とは
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)が増え続ける病気のことを言います。インスリンというホルモンの不足や作用低下によって血糖値の上昇を抑える働きが低下してしまうため、高血糖が慢性的に続きます。高血糖、つまり血糖値が高いことで、血管や血液の状態が悪化し発症する病気です。
糖尿病の特徴は、自覚症状が現れにくく、痛みもない点です。そのため放置しがちです。
自覚症状が出たときにはかなり進行している可能性もあります。
高血糖における主な自覚症状は、
- 喉が渇く、水をよく飲む
- 尿の回数が増える
- 体重が減る
- 疲れやすくなる
などがあります。
日本では、成人の6人に1人が糖尿病の疑いがある(可能性がある人を含む)といわれています。
タイプ別の症状や原因について
糖尿病は、いくつかの種類に分類されますが、大きく分けると、1型と2型、その他、妊娠糖尿病に分類されます。細かく見ていきましょう。
1型糖尿病
1型糖尿病では、自分の体の中でインスリンを作ることができなくなってしまいます。このため血管のなかにブドウ糖があふれかえってしまいます(高血糖)。生きていくために、注射でインスリンを補う治療が必須となってしまいます。1型はインスリン依存型とも呼ばれます。
小児期を中心にどんな年代でも発症し、生活習慣が関わる2型糖尿病とは、原因、治療が大きく異なります。
2型糖尿病
2型糖尿病は、最も多いタイプの糖尿病です。インスリンが出にくくなったり、インスリンが効きにくくなったりすることによって血糖値が高くなります。2型はインスリン非依存型とも呼ばれます。
2型糖尿病となる原因は、遺伝的な影響に加えて、悪い生活習慣が影響しているといわれています。
すべての2型糖尿病患者の方に生活習慣の問題があるとは限りませんが、血糖値をコントロールするためには、食事や運動習慣の見直しがとても重要です。場合によって、飲み薬や注射なども利用します。
その他の特定の機序、疾患によるもの
糖尿病以外の病気や、治療薬の影響で血糖値が上昇し、糖尿病を発症することがあります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは、今まで糖尿病と言われた事がないにもかかわらず、妊娠中に始めて指摘された糖代謝異常のことをいいます。
糖は赤ちゃんの栄養となるので、多すぎても少なくても成長に影響を及ぼすことがあります。そのため、お腹の赤ちゃんに十分な栄養を与えながら、細やかな血糖管理をすることが大切です。
妊娠中は絶えず赤ちゃんに栄養を与えているため、お腹が空いているときの血糖値は、妊娠していないときと比べて低くなります。
一方で、胎盤からでるホルモンの影響でインスリンが効きにくくなり、食後の血糖値は上がりやすくなります。
多くの場合、合併症なく通常通り出産し、産後は血糖も正常化するケースがほとんどです。しかし、妊娠糖尿病を経験した方は将来糖尿病になりやすいといわれています。
糖尿病がもたらす合併症
糖尿病は、全身にさまざまな合併症をもたらします。中でも糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経障害が代表的で、糖尿病の三大合併症と呼ばれています。
糖尿病網膜症
網膜症は、糖尿病が原因となっている可能性が高いため、糖尿病網膜症と呼ばれます。
慢性の高血糖が、目の網膜に広がっている毛細血管を傷つけます。わずかな出血と、白斑が初期症状としてでますが、ほとんどの場合自覚症状がありません。進行に伴い視力や視野が悪化して、最終的には失明に至ることもあります。
糖尿病性腎症
腎臓は、血液を濾過して老廃物を尿として排出しながら、体内の水分量や電解質バランス・血圧などを調整しています。高血糖の状態が続くと、腎臓の毛細血管を硬化させます。腎臓のフィルター機能が衰え、進行するとむくみ、貧血、高血圧などの症状があらわれます。腎機能がさらに低下すると、老廃物を尿に排出することができずに、人工透析が必要となります。
糖尿病神経障害
高血糖の状態が長く続くと神経に障害が現れます。運動神経、知覚神経、自律神経に障害が及ぶと、さまざまな症状が表れますが、神経障害がおきているため苦痛を感じないことがあります。最悪の場合、細菌感染から壊疽(細菌が入り込み、組織が腐る状態)を起こして、下肢切断に至るケースもあります。
血糖値を改善する生活習慣とは
血糖値を改善するには、生活習慣を見直すことが重要です。ここでは、食事と運動にしぼって紹介します。
食事での改善
高血糖を防ぐためには、1日3回の食事を規則正しく摂るようにしましょう。正しい食習慣により過食を避け、偏食しないことです。特別な食事をすることではありません。
次に栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質・ビタミン・ミネラル)の過不足がないように、栄養バランスの良い食事をすることです。好き嫌いなく、いろいろな食品を食べることが大切です。食べてはいけない食品は基本的になく、糖尿病に特に良い食品もありません。
さらには味付けを薄くし、塩分の濃い加工品をひかえることによって食塩を減らして、高血圧を予防します。また脂身の多い肉などをひかえて、脂質が増えるのを予防。野菜・きのこ・海藻などにより食物繊維を豊富に摂取します。これらによってより効果的に合併症の発症を予防できます。
また、食事をする際にしっかりよく噛み、ゆっくり食べることで血糖の急激な上昇を抑えてくれる効果があります。早食いをしたりすると満腹を感じる前に食べすぎてしまうことがあるため、ゆっくり食べることは大事です。腹八分目にして好き嫌いなく食べるという、当たり前のことを実行することが大切です。
運動での改善
定期的な運動習慣によって、血糖値の改善だけでなく、以下の効果があります。
①心肺機能が高まる、②一部のがんを予防できる、③脳の機能が高まる。
運動の種類として、有酸素運動と筋力トレーニングを合わせて行うと効果的です。
有酸素運動は、1回30分を目安に、息が弾むくらいの強度で行いましょう。種目としては、ウォーキング、ジョギング、水泳などがおすすめです。また、水中歩行は、膝への負担が少なく、体重のある方に安全で効果的な運動です。
有酸素運動は、週に2〜5回程度行いましょう。
筋力トレーニングは、最大挙上重量の60〜80%の重さを8〜12回程度繰り返すことが勧められています。大きな筋群(胸、背中、下肢)をまんべんなく行うと、効果が高まります。筋力トレーニングは週2〜3回程度行いましょう。
また、関節可動域を広げるために、ストレッチも行いましょう。静的なストレッチに加え、動的なストレッチにも同様な効果が期待できることが明らかになっています。
運動するタイミングについては、生活の中で可能な時間であればいつでも良いですが、食後1時間後に行うと食事の高血糖状態の改善に期待できます。
まとめ
血糖値の異常は、さまざまな病気につながります。特に糖尿病が代表で、その後の合併症などのリスクも高まります。症状がまったくないのも特徴ですので、健康診断や特定健診などで基準値より高い血糖値が出た際には、必ず医療機関を受診し、医師の診断を受けるようにしてください。
また、基準値や平均値以下の方も、生活習慣に気をつけて、日々の食事や運動を見直すなどして血糖値をコントロールしましょう。