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2023/03/21

知っておくべき血糖値の正常値!血糖値異常にひそむリスクとは

血糖値の正常値をご存じですか?血糖値の専用の測定器は、ドラッグストアで簡単に手に入るものではありません。また、血圧のように病院にいくたび測られることもないため、自身の血糖値を知る機会が少ないといえます。

しかし、血糖値は、血圧と同様に血管の健康に大きく影響します。今回は、知っておくべき血糖値の正常値をはじめとして、異常に潜むリスクから血糖値対策のためにすることを解説してきましょう。

知っておくべき検査での「血糖値」

健康診断を受けると、血糖値の項目を見つけることができます。ひとつは食事をとっていない空腹時の血糖値です。そしてもうひとつ、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という項目も、血糖値の状態を示す検査になります。この2つは、自身の日頃の血糖値が正常値内に収まっているかを確認するものです。この2つが異常なしであれば、例外はあれどほぼ血糖値に関しては問題ないといえるでしょう。2つの値でわかることを詳しく見ていきましょう。

空腹時血糖でなにがわかる?

まず、空腹時血糖は、文字通り胃が空っぽの状態での血糖値です。正確にいうと、最後の食事から10時間以上開いており、血液中に余分な糖がない状態での値です。検査前の夜の食事は軽めにし、朝は何も胃に入れずに検査を受けないと、正しい値を得ることはできません。固形物でないからと、缶コーヒーを朝に飲んでは大変です。缶コーヒーにはかなりの糖分が入っているため血糖値に大きな影響を与え、正しい検査にはなりません。飲み物は水や無糖のお茶にしましょう。

HbA1cでなにがわかる?

次にHbA1cについて見ていきます。あまり意識しない検査項目かもしれませんが、血糖値状態を見るにはこちらもかなり重要です。
ヘモグロビンA1cは、直近約1~3ヶ月の血糖値の状態が良かったか悪かったかがわかるものです。

もう少し詳しくいうと、.HbA1cは、血液成分であるヘモグロビンが、血中にあるブドウ糖と結び付いて糖化ヘモグロビンになった割合を示しています。ブドウ糖が多ければ多いほど普通のヘモグロビンに対して糖化ヘモグロビンの割合が高くなります。
いったん結び付くと離れることはなく、赤血球の寿命まで糖化したヘモグロビンのままであるため、その割合を測定することで血液中のブドウ糖量が適切であったかなかったかを過去の状態まで見ることが可能になります。

血糖値の正常値とは?

では、血糖値の正常値とはいったいどれくらいでしょうか。自身の血糖値はギリギリセーフなのか、全く問題がないのかも知っておくことが大切です。
血糖値は急激に悪くなるケースもありますが、徐々に徐々に上がっていく場合がほとんどです。去年一昨年の数値もしっかり把握して比較するこも大事です。
また、血糖値は常に一定ではなく、日々食べるものや運動量に影響を受けて変動しています。空腹時、食後においてのそれぞれの正常値も知っておくとベターです。
以下、血糖値が変動する仕組みとあわせてそれぞれの正常値について解説します。

血糖値を調節するホルモンたち

血糖値は1日のなかで上下し、変動しています。食べて血中にブドウ糖がはいると上がり、ブドウ糖がエネルギーとして利用されるため細胞に取り込まれると下がっていきます。

しかし、健康であれば、食べて全く動かなくても血糖値は下がります。食べなくても上がることもあります。エネルギーが必要だからとブドウ糖を取り込みすぎて危険なほど下がりすぎることもありません。

それは血糖値を調整するホルモンたちのお陰です。
上げる作用のあるホルモンは次の通りです。

成長ホルモン、副腎皮質ホルモン(コルチゾール・アルドステロン)、副腎髄質ホルモン(カテコールアミン)、甲状腺ホルモン、グルカゴン、ソマトスタチンなど

多数ある上げるホルモンに対して、下げる作用のあるホルモンは、すい臓から分泌されるインスリンひとつだけです。
血糖値異常にはこのインスリンの働きが大きく関与しています。

空腹時血糖値の正常値

空腹時血糖値は、健康な人であればほぼ一定に保たれています。正常値は次の通りです。

空腹時血糖値 約70~100mg/dlの範囲

126mg/dl以上であれば、糖尿病と判断される数値となります。100~126mg/dlは糖尿病予備軍と呼ばれます。きちんと前食から10時間以上開いてからの測定値なら高血糖状態が続いている可能性があります。

高いことを意識しがちですが、常に低い人も危険が潜んでいるので注意が必要です。

HbA1cの正常値

HbA1cは、次のような式で求められるものです。

HbA1c=糖と結合したヘモグロビン量÷総ヘモグロビン量

おおよそ直近1〜3ヶ月間の血糖値の状態がここからわかります。
正常値は次の通りです。

HbA1c 5.6%未満

5.6~5.9%なら要注意となり、6.5%以上なら糖尿病との判断がなされますが、6.0%以上なら詳しい検査を行った方が無難です。ちなみに、正常値を示す規格が2012年国際的に使われているものに変更となりました。それ以前に使われていた測定値より、0.4上がっています。

血糖値をはかるタイミング(食後高糖値と血糖スパイク)

血糖値を測るタイミングは健康診断では空腹時のみです。しかし、この値が正常であるから問題なしとはいいきれないところがあります。
食後に高血糖が起こってるかもしれません。
中期的なことはヘモグロビンA1cの値で判断できますが、一時的に短い期間急激に高血糖になる血糖値スパイクを起こしている方が少なくないと言われています。
高血糖になったあと、また急激に降下するので、異常を発見しにくいのです。ずっと高いわけでないからいいのでは?と思うかもしれません。
しかし、この急激な変化が血管を硬化させてしまうことがわかっています。
血糖値スパイクを発見するには、食後1~2時間後の血糖値測定をする必要があります。
食前、食後1~2時間後と2、3回の血糖値測定で、かなり正確な自身の健康状態がわかります。

血糖値異常が引き起こす仕組み

血糖値はどうして異常値(高血糖)になるのでしょうか。次はその仕組みについて見ていきましょう。
まず、正常な状態とは、空腹時血糖値が100mg/dl未満であり、食後2時間後の血糖値が140mg/dl未満で、その後数時間で空腹時血糖にまで戻る変化を示します。
食事をすると、食べ物のなかの糖質がブドウ糖に分解され消化吸収されます。そして、エネルギーとして細胞に使ってもらうために血液にのせて全身へ運びます。このとき、血糖値が上がるのは必然です。そしてインスリンの働きにより細胞にブドウ糖が取り込まれ、血糖値が正常値に保たれます。
異常値(高血糖)を示す場合は、きちんと血液中のブドウ糖が処理されないまま血中に残っていることになります。

血糖値異常となる原因

血中にブドウ糖が必要以上に溢れてくるのはどうしてでしょうか。その原因としては2つ考えられます。
ひとつは、ブドウ糖を下げる作用をするインスリンの作用効果が不十分、もうひとつは、インスリンの分泌不足です。

どちらもインスリンが確実に関わってきます。
上げるために作用するホルモンは多数あるため一つが働かなくても代わりがありますが、下げる作用をするホルモンはインスリンのみであるため、インスリンがきちんと働ける状態をつくることが重要です。

インスリンの働き

インスリンは、前述したように血糖値を正常にするためには必要不可欠なホルモンです。
インスリンの働きを詳しく見ていきましょう。

  1. 細胞のエネルギー源として血液中のブドウ糖をとりこむ
  2. 余ったブドウ糖を貯蔵するためにグリコーゲンや中性脂肪の合成を促進する

2つめの働きから、インスリンはいわゆる太るホルモンとしても知られています。過剰に分泌させないことがシェイプアップのためにも大切になってきます。

インスリンが働かなくなる3つの要因

インスリンが働いていないと血糖値は高くなります。なぜ働かない状態になるのでしょう。3つ理由が考えられます。

  1. インスリンを出す膵臓の細胞がそもそも壊れている
  2. インスリン分泌が不足している
  3. インスリンは十分分泌されているけれど、効きが悪く処理ができていない

膵臓の細胞が壊れてしまう要因は、ひとつには自己免疫疾患が関わっていると言われています。自分の免疫活動のなかで、自身の細胞を間違って攻撃してしまい、壊してしまう病気です。なぜそうしたことが起こるのかははっきりわかっておらず、痩せてる太ってる、若い若くないに関わらず可能性があります。

インスリンが十分あるのに効きが悪くなる要因は、肥満や遺伝などがあげられますが、さまざまな原因がインスリン抵抗性を産み出します。

こうしたインスリン抵抗性の状態が続くと、インスリンが過剰に分泌され最終的には膵臓の分泌機能が低下してしまい、高血糖が続いてしまいます。食べ過ぎなどで膵臓に負担をかけている段階で改善していく必要があります。

高血糖が引き起こすリスク

今度は高血糖が引き起こすリスクに目を向けていきましょう。高血糖状態になると、本来水分である血液が糖分を多く含むことによってドロドロした流れとなります。ドロドロした血液は停滞を起こします。こうした血流の悪さと糖が作り出す活性酸素により血管が傷み、トラブルを引き起こす原因となってきます。
最終的に高血糖状態が続き、決められた正常値を超えると糖尿病と名前が付くことになりますが、糖尿病と診断されなくても高血糖から様々な健康トラブルが起こります。

肥満からつながる様々な不調

まずは高血糖状態が続くとインスリンが過剰に分泌され、血糖を正常に保つべく、せっせと糖を細胞内に送り込みます。それらがエネルギーとして使われると問題ないのですが、運動量が足りず余ってしまった場合は脂肪となって蓄積されていきます。肥満になってしまうと、膝や腰に負担がかかり痛みがでたり、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの病気の原因となります。

糖尿病

肥満になるとインスリンの効きが悪くなります。これをインスリン抵抗性といい、抵抗性が増すとさらにインスリンが過剰に分泌され最終的に分泌不足を起こしてしまい、糖尿病と診断されることになります。

糖尿病であるということ自体は命に危険があるものではありません。怖いのは三大合併症です。これらの合併症は、高血糖のまま対策をしないでいると、細い毛細血管が傷つき破壊されたり詰まったりして次に挙げる障害が起こることがあります。

神経障害・・・足先など細かい部分の神経細胞に血液がいかず、感覚が鈍る
網膜症 網膜の毛細血管がダメージをうけ、網膜剥離や出血を起こし、最悪の場合失明に至る
腎症 腎臓のろ過する機能が弱くなり、最悪の場合人工透析が必要となる

高血圧の方は血管が弱くなっている可能性があるため、特に注意が必要です。

動脈硬化

毛細管がダメージをうけることで合併症が起こりますが、血液がどろどろであれば主要な動脈にも影響が出ます。
ある程度加齢などで動脈は硬化するものですが、高血糖であればそうでない人と比べて硬化の進行が早いとも言われています。さらに肥満や高血圧が重なるとより硬化は進んでいきます。
動脈硬化により、狭心症や心筋梗塞、脳出血や脳梗塞のリスクが高まります。

低血糖症も危険

高血糖は様々なリスクがありますが、低いからといって安心ではありません。低血糖も限度を超える様なら命が危険にさらされることもあります。
しかし、健康な人は絶食しても運動量が多くても血糖値が下がりすぎることはめったにありません。なぜなら、上げるために働くホルモンが多数存在しているからです。よくきくアドレナリンでも血糖値は上がることが知られています。
注意が必要な人の多くは、糖尿病の治療を薬や注射で行っている人で、このような方は低血糖症の危険があります。薬が効きすぎてインスリンが必要以上に働いてしまうのです。
50ml/dl以下になると昏睡などの深刻な事態となる可能性があります。
健康な人でも70ml/dl以下になると震えや冷や汗などの症状がでることがあります。
症状を改善するのは簡単です。すぐブドウ糖になる甘いものを食べて血糖値を手早くあげます。

血糖値を正常値にするためにできること

実際のところ、血糖値が高いだけでは特に体の不調を自覚することは少ないです。頻尿や喉が異様に渇くなど、糖尿病の初期症状が出始める段階ではかなり高血糖状態が続いている状態であるといえます。
まず高血糖を血糖の測定を通じて自覚すること、自覚できたら細胞がインスリンの感受性を取り戻すために、食事や運動など日常生活を見直してできることをやっていきましょう。

食物繊維をとる

食後血糖値をあげないために、水溶性食物繊維を積極的にとります。その水溶性食物繊維の一つに難消化性デキストリンという成分があります。難消化性デキストリンは、消費者庁が管轄する機能性表示食品の機能性関与成分の一つとして登録されています。この成分を配合し届け出た機能性表示食品には、食事から摂取した糖の吸収をおだやかにするため、食後の血糖値の上昇を抑える機能があることが報告されているものがあります。

食事のとり方を見直す

食事の取り方も工夫していきましょう。例えば食べる順番です。前述した通り、食物繊維の多い食材は、糖質を摂る前に食べることで血糖値の上昇を穏やかにします。
野菜をまず食べ、次に副菜、最後に炭水化物であるごはんやパンを食べるとよいでしょう。

またしっかり噛むことも大切です。噛むことで食べ物に粘りが増します。この粘りが、糖に吸収を緩やかにするのです。

また、時間がとれれば1日3食にこだわらず、一食分の量を減らしこまめに4食5食にすると、1日の血糖値変動が少なくなります。

カーボカウント

食事を食べるときに炭水化物を意識することも大事です。糖質を適切に摂取する方法の一つがカーボカウントです。カーボとは、ロカボ(ローカーボネイト)との言葉もあるように、カーボネイト=炭水化物の略です。炭水化物量を独自の計算式でカウントし、適切な量を摂取できるようにしたものです。
これは糖尿病の方が糖質の摂取量に応じて適切なインスリン注射が打てるよう開発されたものです。血糖値を意識する方が利用することで糖質量の調整ができます。

日本では多くの場合10gの糖質を1単位として計算し、各食事目標単位内に収めていくことで食後血糖値を抑えるとしています。

しかし、この方法の難点は、どの食材に何gの糖質が入っているのかわかりづらいところです。
しかし、おおよその糖質(カーボ)を把握する(カウント)ことを意識するだけでかなり変化するのではないでしょうか。

適度な運動をする

肥満にならないため、そして血液にある糖質を効率よく使うため、運動することは重要です。
食後血糖値をさげるためには食後の軽い運動が有効ですが、内容にこだわらなくても習慣化することが大切です。なぜなら、運動習慣がインスリン抵抗性を改善するとの報告もあるからです。駅ではエレベーターを使わず階段を使う、通学通勤は意識して徒歩にする、お掃除ロボットに頼らず拭き掃除にしてみるなど、生活の中で運動を取り入れてみましょう。

ストレス緩和

ストレスがたまると過食に走ることはないでしょうか。暴飲暴食は血糖値を乱れさせてしまいます。そんなタイプの方はもちろん、そうでなくてもストレスを感じると血糖値が上がりやすい傾向になります。
ストレスを感じると、血糖値を上げるホルモンが分泌されるのです。また、インスリンの効きも悪くなってしまいます。

ストレスを感じないことは難しい世の中なので、なるべく貯まらないよう、好きな趣味や音楽などでリラックスできる環境をつくりましょう。

まとめ

血糖値の正常値は、空腹時血糖値だけでなくHbA1c、そして食後血糖値にも存在し、それぞれ範囲内であることが健康の秘訣です。

2つが正常でも、一つが異常値を示すと糖尿病をはじめとした病気のリスクがあるため、医師などの専門家に相談しながら改善する必要があります。

それと併せて、生活習慣を特に食事の面から見直して長く健康でいられるようにしていきましょう。

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