年齢が高くなるにつれ、血圧の高い人が増えていきます。政府の調査によると、20歳以上の国民2人に1人が血圧の高さを指摘され、深刻な問題になっています。原因となるのは遺伝的要素の他塩分の摂り過ぎ、喫煙などの生活習慣が主な要因です。
この記事では血圧のしくみや血圧が高くなる原因や症状、対処法を解説します。
目次
血圧とは?
心臓から送られた血流が血管の内壁を押すときに生じる圧力を、血圧といいます。そして最高血圧と呼ばれているのは、心臓が収縮したときの血圧で収縮期血圧、最低血圧と呼ばれているのは、拡張したときの血圧で拡張期血圧をさしています。
ここでは血圧のしくみや最高血圧、最低血圧についてわかりやすく解説しましょう。
血流が血管の内壁を押す圧力
心臓はポンプのように縮んだり広がったりして、血液を全身に運びます。そしてその際に生じるのが、血管の内壁を押す血流による圧力です。その圧力を血圧と呼びます。
最高血圧・最低血圧がある
最高血圧・最低血圧とは、どういった状態のことをいうのか下記で紹介します。
最高血圧:心臓が収縮して、最も強い圧力がかかっている状態です。収縮期血圧とも呼ばれるもので、大動脈が膨らみ血液も溜まっています。
最低血圧:心臓が広がった(拡張した)状態です。拡張期血圧とも呼ばれます。大動脈が元の大きさになり、末梢血管に血液の供給を続けている状態です。
下記に日本高血圧学会の、高血圧診断基準を示します。基準としては病院での診察で最高血圧140mmHg・最低血圧が90mmHg以上だと、高血圧と診断されます。
自宅で血圧を測るならば、病院よりも5mmHg低い数値が基準です。
病院での血圧 | 家庭での血圧 | |||||
最高血圧 | 最低血圧 | 最高血圧 | 最低血圧 | |||
正常範囲 | 119以下 | かつ | 79以下 | 114以下 | かつ | 74以下 |
正常範囲高値 | 120から129 | かつ | 79以下 | 115から124 | かつ | 74以下 |
高値血圧 | 130から139 | かつ/または | 80から89 | 125から134 | かつ/または | 75から84 |
ⅰ度高血圧 | 140から159 | かつ/または | 90から99 | 135から144 | かつ/または | 85から89 |
Ⅱ度高血圧 | 160から179 | かつ/または | 100から109 | 145から159 | かつ/または | 90から99 |
ⅲ度高血圧 | 180以上 | かつ/または | 110以上 | 160以上 | かつ/または | 100以上 |
収縮期高血圧 | 140以上 | かつ | 89以下 | 135以上 | かつ | 84以下 |
出典:厚生労働省ヘルスネット
血圧が高い原因
血圧が高い原因はさまざまなものが考えられます。その原因は人によっても異なるものです。
高血圧は2種類に分かれます。さまざまな原因があげられる本態性(ほんたいせい)高血圧と、原因が明らかな二次性高血圧です。
本能性高血圧の原因は肥満や塩分過多・ストレス、喫煙・遺伝・生活習慣などが考えられます。二次性高血圧の場合腎臓・内分泌系・心臓、血管の病気が原因です。病気が治れば血圧が下がります。比較的若い人に多いものです。
ここでは日本人に多い、本態性高血圧の原因について解説します。血圧が高い原因を考えてみましょう。
肥満によって神経シグナルが発せられる
肥満が原因と考えられるケースは多いものです。つまり肥満の人は高血圧患者が多いといえます。
肥満が血圧を上げるメカニズムについては、動物実験によって、肝臓に脂肪が蓄積されることで発せられる神経のシグナルが関係していると考えられています。
塩分過多で血中の塩分濃度が高いため
塩分の多い食品を食べる機会が多いと、のどが渇くでしょう。なぜならば血中の塩分濃度が高くなるからです。
こうした状態になると体は塩分濃度を下げるために、次々と水分を取り込みます。その結果血液量が増えて、心臓に大きな圧力がかかります。
ストレスで心拍数が増えるため
仕事や家庭など、さまざまな場面でかかるストレスがあるでしょう。ストレスがかかると交感神経が刺激され心拍数が上がり、心臓の動きが激しくなります。そして小動脈が収縮されるので、血圧が上昇するのです。
ストレスによる血圧上昇の例も報告されています。たとえば以下のようなパターンです。
- 心理的ストレスの多い航空管制官
- 騒音レベルの高いところで働く工場労働者
- こぢんまりした地域から都会に移住した人
航空管制官は飛行機の安全などを考えるため、心理的ストレスが多いでしょう。また工場での騒音、静かに暮らしていた場所からの移動による、ストレスなどもあります。
喫煙により抹消血管が収縮するため
喫煙により末梢血管が収縮するため、血圧と心拍数が上昇するのです。
ここでは大学病院の研究を紹介します。平均年齢33歳の喫煙習慣のある男性39人に、一定期間の禁煙を実行してもらいました。そして24時間血圧を測ったところ血圧、心拍数ともに低値を示しましたのです。
禁煙の結果喫煙時に比べて日中平均血圧が5/3mmHg、24時間血圧は4/2mmHg、24時間平均心拍数は7拍/分下がっていました。
この研究により、喫煙が血圧に影響を及ぼすことが立証されました。
遺伝
遺伝的体質によって血圧が高くなることもあり、親の血圧が高いと子どもも高くなることが多いのです。こうした遺伝的要因と上記で説明した生活習慣が組み合わさって、原因を作っているとも考えられます。
また親子で血圧が高くなるのは遺伝以外に、同じ食事をしていることが原因という考え方もあります。仮に味付けが濃かったらその濃さは日常化してしまい、親から子へと受け継がれるからです。
血圧が高いと出る症状
ここからは血圧が高い時に出る症状について、説明します。
頭痛・めまい、肩こりが起きやすい
血圧が高いと頭痛、めまい、肩こりといった症状が出ることもあります。しかしこうした症状が現れるのは、血圧がかなり高くなったときです。
一方で、頭痛やめまい・肩こりといった症状は、高血圧でなくても出る症状です。そのため高血圧以外の病気であることも考えられます。いずれにしても、このような症状がある場合は、医師や専門家に相談するようにしてください。
とくに症状はない
とくに症状がないという人も、多いものです。高血圧がサイレントキラーといわれたり、自覚症状がない病気といわれるのもそのためです。
しかし症状がなくても血圧が高いのであれば、病院で治療した方がよいでしょう。高血圧がひどくなると、動脈硬化が進む可能性もあります。
血圧が高いときの対処法
血圧が高いときの対処法を紹介します。主にあげられるのは、血圧が高い原因としても考えられる日々の食事における塩分の過剰摂取を改めることです。
その他にもややきつめの適度な運動、全ての健康維持にも役立つ禁煙などがあげられます。
食べ物に気を付ける
血圧を正常にするにはまず、バランスの取れた食事が大事です。血圧を下げる働きのあるカリウム※を含む野菜や、果物を摂るようにしてください。
野菜料理は毎食1皿以上、1日に小鉢で5〜6杯が望ましいでしょう。生のまま食べるサラダだとあまり多くの量を食べられないので、加熱してかさを小さくすることをおすすめします。
たとえば青菜のおひたし、野菜炒めなど工夫してみてください。知らず知らずのうちに、かなりの量を食べられます。
果物は1日にバナナ1本、みかん1個程度がおすすめです。なおバナナはカリウムが含まれているので、積極的に摂りたいものです。むくみ解消効果も期待できます。
カリウムを多く含む野菜は以下のとおりです。
- 切り干し大根
- パセリ
- ブロッコリー
- 西洋かぼちゃ
以下は果物です。
- バナナ
- 干し柿
- メロン
- ドライマンゴー
- ドライバナナ
またカルシウムにも、血圧の上昇を抑える働きがあります。牛乳やヨーグルトなどを積極的に摂っていきましょう。
※カリウム
カリウムはミネラルの一種で、ナトリウムを排出する作用があります。そのため塩分の摂りすぎを抑えられます。
塩分を控える
塩分を控えることは大事です。血圧が高い原因のひとつに、塩分の過剰摂取があるからです。日本人の摂取の目標は1日8g未満なものの、血圧が高い場合は1日6g未満を目標にしてください。このことは日本高血圧学会でも、推奨されています。
以下に気を付けたいタイプについて、例をあげてみました。
- かけしょうゆ、かけソースをしがちな人
- 漬物好きな人
- ラーメンや麺類が好きで汁をすべて飲んでしまう人
- 味噌汁を1日2杯以上飲む人
- 外食や加工食品が好きな人
かけしょうゆ、かけソースは塩分を過剰に摂ってしまいます。たとえば焼き魚を食べる際にしょうゆを魚全体にかけたり、お肉料理にソースやしょうゆを全体にかけたりする場合です。かけ醤油やソースがお好きな人は、これからはつけしょうゆやつけソースにしてみてください。自然と塩分量が減ります。
また漬物は日本の食生活に欠かせないものとはいえ、食べ過ぎると塩分が多くなってしまいます。そこで自家製の浅漬けにすると、塩分を減らせるでしょう。
さらにラーメンや麺類の汁をすべて飲んでしまうと、6g近い塩分摂取になります。汁はできるだけ残すようにしてください。
味噌汁も1日2杯は、塩を摂りすぎです。1杯にすることをおすすめします。ただ具沢山にすると同じ味付けでも、薄味になります。調理を工夫してみることも大事です。
外食や加工食品は塩分が多いので、できれば控えたいものです。ただし最近のレストランでは、塩分量が書いてある場合もあります。記載されているメニューを見て決めるのもおすすめです。
いずれにせよ、塩分をどのくらい使ったかわかる自炊がおすすめです。
適度な運動で体重を落とす
適度な運動で体重を落とすことも大事です。おすすめは有酸素運動となります。速めに歩くウォーキングやステップ運動、スロージョキング、ランニングなどがあげられます。定期的に毎日30分以上の運動が望ましいでしょう。1回の運動を10分以上行い、合計で30~40分としても大丈夫です。
運動の強度は「ややきつい」と感じるほどが、望ましいレベルです。強度が高いとかえって血圧が上がってしまいます。
しかし運動する時間がない人、運動は苦手なのでできればしたくないという人もいるものです。そういった人におすすめなのは「ながら運動」です。たとえば家事をしながらでも運動はできます。
お皿を洗いながらスクワット、買い物は少し離れたスーパーまで歩いて行くなど工夫ができます。駅はエスカレーターに乗らずに、階段を使うなどでもよいでしょう。ストレスにならない程度で運動を行うのもおすすめです。
最近の傾向として、YouTube動画で適度な運動を取り上げているケースも多いでしょう。そういった動画を見ながら、マイペースに運動するのもおすすめです。
禁煙する
喫煙が血圧に及ぼす影響を考えると、禁煙することも大事です。禁煙のやり方は人それぞれでしょう。
たとえば周囲の人に禁煙宣言をすると、後に引けなくなって禁煙を頑張れます。または趣味をもってたばこのことを忘れるなど、自分なりのやり方を探ってみるのもおすすめです。
禁煙は血圧のみでなく、他の病気のリスクも抑えられます。心臓発作のリスクやせきやたんなどの呼吸器系の改善、呼吸器系感染症にかかりにくくなるなどの効果が期待できます。
まとめ
血圧が高い原因は人それぞれで、さまざまなことが考えられるでしょう。たとえば二次性高血圧の場合は腎臓・内分泌系・心臓、血管の病気が原因です。他には生活習慣や遺伝が原因の本態性高血圧も存在します。
血圧の高い人は食生活を見直すことが大事です。カリウムを含む野菜や果物を取り入れた食事にする、塩分を抑えるなど普段の生活から見直していく必要があります。
また、運動も大事な対処法です。おすすめは「ややきつい」と感じる程度の有酸素運動です。無理せず、楽しく動ける運動を心掛けてみてください。家でできる運動も多数あります。
その他には血圧に影響を与えるタバコを見直すことも大事です。習慣になっている場合は禁煙を試みてみましょう。
血圧が高い場合には頭痛やめまいなどの症状が出るケースもありますが、無症状という人がほとんどです。
普段からまめに血圧を測り自分の血圧を把握することが大事です。高い状態が続いたら、お医者様に相談するなど早めの対処をお願いします。