私たちの健康にとって密接な関わりがある”血糖値”ですが、血糖値の数値が上がると一体どういった問題が起こり得るのでしょうか?血糖が上がる原因となるものには、食事など様々な要因が挙げられます。数値が正常ではなく高い場合は高血糖と呼ばれていますが、血糖値が上昇すると疾病を引き起こす危険が高くなってきます。
健康診断などで血糖値を指摘された場合は、医師などの専門家に相談して指導を仰いでください。その上で血糖値に対する正しい知識を身につけて自ら気をつけることが大切です。
本文では、血糖値が上昇することによって起こるリスクについて解説していきます。
目次
血糖値とは
テレビやネットなどでもよく耳にする”血糖値”。血糖値が上昇して高血糖となった場合は、私たちの身体に様々な影響を及ぼす原因にもなってしまいます。食事と密に関係している血糖ですが、そもそも血糖とは何でどういう仕組みでできるものなのでしょうか。また、血糖についてや血糖値が上昇するメカニズムについて順番に解説していきます。
血糖とは何か
血糖値という数値の元である血糖とは、私たちの身体を流れる血液中に存在するグルコース(ブドウ糖)の事を言います。グルコースは自然界において最も多く存在している単糖類で、糖分を含む食べ物を摂取すると消化酵素などによってグルコースに分解されて、小腸から血液中に吸収すると血糖になります。血糖の濃度が上昇すると、インスリンの働きにより体内の各細胞に取り込まれてエネルギーとして利用されていきます。また、健康な人でも空腹時(食前)には血糖値は下がり、食後には血糖値が上がるといったように変動があるのも特徴です。
糖分を摂りすぎると良くない、というイメージがどうしても強くなってしまいがちです。しかし、糖分は体や脳にとってエネルギー源となっている為、私たち人間にとって必要不可欠な存在です。健康な状態でいる為にも、血糖を正常値に保つことが大切なのです。
インスリンとは
血糖と関係の深いインスリンとは、膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌されるタンパク質性ホルモンの事を言います。インスリンには血糖値を調整する働きがあり、体内に含まれる血糖が上がると、血液中の血糖値を下げて正常に戻す役割を担っています。
インスリンのその他の主な働きは、下記の通りです。
・血液中のグルコースを細胞に取り込ませる働き
・グルコースをグリコーゲンに変換して、筋肉や肝臓に貯えさせる働き
・余ったグルコースを脂肪として貯えさせる働き
インスリンが分泌されなくなってしまうと、逆に血糖が上がって病気に繋がる恐れがあります。このことから、私たちの健康にとってとても重要な役割を担っているホルモンだと言えるのでしょう。次に、グルカゴンについてご説明していきます。
グルカゴンとは
グルカゴンは、主に膵臓のランゲルハンス島のα細胞から分泌されるホルモンの一つです。グルカゴンには血糖を調整する働きがありますが、体内の血糖値が下がると血液中の血糖を増やす役割を担っています。
グルカゴンのその他の主な働きは、下記の通りです。
・肝臓に貯えられているグリコーゲンを分解してグルコースに戻す働き
・脂肪を分解し、グルコースに変換する働き
このように、血糖を増やす働きを持つグルカゴンと、血糖を減らす働きを持つインスリンは、互いに協力しながら体内の血糖を正常値に保っています。次に、正常の血糖値について解説していきます。
正常の血糖値
血糖値には正常だとされる範囲があり、空腹時(食前)に血糖を測った場合の数値が70~100㎎/㎗程の範囲内であれば正常とされています。また、上限は140㎎/㎗までが目安とされており、空腹時や食後の血糖値が範囲外であれば異常値となります。この数値に関係してくるのが、前項でお伝えしていたインスリンとグルカゴンが重要になり、この2つのホルモンの働きが血糖値を大きく左右してくるのです。
空腹時血糖
前項で血糖の正常値についてご説明していたように、健診などでは空腹時においての血糖値が重要視されています。食事をして糖分を分解・吸収し、インスリンが働いた後の血糖値をを測定する為には、食事をしてから10時間以上経った時(一番安定している時)の血糖値が用いられており、この時の血糖値のことを空腹時血糖と呼んでいます。空腹時血糖の数値を知る事で、体内の血糖が上がるときにインスリンが正常に働いているのかどうかが分かるのです。では、食後の場合はどうなのでしょうか?次項で解説していきます。
食後血糖値
食事を行うと同時に体内では消化と吸収が始まり、血糖値も徐々に上昇していきます。食後約2時間後に測定する血糖値を食後血糖値と呼んでいます。食後血糖値を測定した場合、上限140㎎/㎗を超えていると、体内の血糖濃度が高いという判断が出来ます。一般に血糖値を測定するのは空腹時血糖が注目されていますが、健康でいる為には食後血糖値がどれぐらいの数値なのかを知る事も大切です。
血糖値が上昇するメカニズム
前項で血糖値について解説してきましたが、血糖値というものが上昇する仕組みとは、一体どうなっているのでしょうか?
食べ物を摂取して消化酵素によって分解されたグルコースは、主に腸管から血液中に吸収されていきます。血液に入ったグルコースはインスリンの働きによってグリコーゲンに変換して筋肉や肝臓へエネルギー源として貯えられ、体中の各細胞に届けられたもの以外の余ったものは脂肪として貯えられています。
血糖値が上がると考えられる要因は炭水化物等を摂取するという事でもありますが、もう一つはインスリンの働きにも左右されているという事です。
では、血糖値が上がる要因について、次項で詳しくお伝えしていきます。
血糖値が上がる主な要因
ここまで血糖値の正常値や、上昇するメカニズムについてお伝えしてきました。更に血糖値が上がる要因について知る事が出来れば、対策もしやすくなります。要因については様々ですが、本項では血糖値が上がる主な要因である、肥満・過食・ストレス・運動不足・遺伝的要因の5つをご紹介していきます。
肥満
脂肪が内臓や皮下へ過剰に蓄積されている状態を肥満といいます。では、どうして肥満と血糖が関係しているかというと、膵臓から分泌されるホルモンである、インスリンの働きが深く関わってきます。
インスリンの働きには、血糖値を下げる他にグルコースを脂肪として貯えさせる、という働きを持っています。という事は、身体が肥満状態の時には同じように体内の血糖も上がっている状態が続いているのかもしれないのです。
過食
通常の食事の場合、血糖値は緩やかに上昇していくものですが、過度な食事を行うことにより体内では、急激に血糖値が上昇している状態になります。この時、脳は急いで血糖値を下げなくてはいけないと判断し、膵臓へインスリンの分泌を促します。しかし、インスリンの働きが追い付かないほど血糖が増える状態が続けば、体内の血糖濃度が上がった状態が続くということです。
ストレス
ストレスを感じると、身体は交感神経優位の状態になります。この状態は脳が刺激されて、様々なホルモンが分泌を促されるのですが、その中には血糖を上げるホルモン・グルカゴンやコルチゾールなども含まれます。グルカゴンについては血糖値の項目で解説していましたが、実は副腎皮質から分泌されるコルチゾールというホルモンにも、糖新生を促す効果があります。コルチゾールは別名ストレスホルモンとも呼ばれており、血糖を上げる原因となるストレスには十分注意する必要があるのです。
運動不足
筋肉には、グリコーゲンを貯えてエネルギーとして消費する働きを持っています。運動不足の状態になると、身体の活動量が低下し、グルコース(ブドウ糖)の取り込みを抑制する原因になってしまいます。その結果、インスリンが効きにくくなる状態(インスリン抵抗)になり、血糖値がコントロールできず高血糖となってしまいます。
遺伝的要因
血糖値を下げる働きを持つ、インスリンの分泌量が少ないことが原因の病状を2型糖尿病と呼んでいます。疫学研究では2型糖尿病は遺伝すると言われており、血縁者が2型糖尿病の場合その子供の発症率は高い、とされています。必ずしも遺伝する訳ではありませんが、血糖値が上昇する要因には遺伝的要因も含まれると考えられています。
血糖値が上がることで起きる可能性がある病気
前項でご紹介した通り、血糖値が上昇するには主に5つの要因があることが判明しました。では、血糖値が上がることでどのような病気になる可能性があるのでしょうか?
本項では、血糖値が上がることで起こる可能性がある病気についてや、血糖値と関わりがあることでよく知られている糖尿病も含めて詳しくご紹介します。
糖尿病
血糖値が上昇することで起こり得る病気として、最も良く知られているのが糖尿病です。この病気は、インスリンの働きが十分ではなく、高血糖が続いてしまう病気で、大きく1型糖尿病と2型糖尿病の2つに分けられています。
分類の特徴は、下記の通りです。
・1型糖尿病
インスリンがほとんど出なくなる状態(インスリン分泌低下)になる。
・2型糖尿病
インスリンの分泌低下や、インスリンが効きにくくなる状態(インスリン抵抗性)になる。
糖尿病には、主に下記の症状が見られます。
・口が乾き、水分を欲するようになる
・トイレに行く回数が増える
・体重減少
・疲れやすい
・意識障害
上記に挙げた症状以外にも、その他の合併症を引き起こすリスクが上がる要因にもなってしまう、病気なのです。
糖尿病の合併症
糖尿病は血中に含まれる糖が多くなる状態なので、長い年月であればあるほど、おのずと血管にも支障をきたします。では糖尿病が引き起こす、合併症にはどのようなものが挙げられるのでしょうか?
糖尿病の合併症は種類を大きく分けると、細い血管と太い血管に分かれます。それぞれを下記まとめてみました。
〇細い血管
・糖尿病性神経障害…手足のしびれ、感覚が鈍くなる
・糖尿病性腎症…腎臓の働きが悪くなる
・糖尿病性網膜症…視力低下
〇太い血管
・脳卒中
・心筋梗塞
上記の他にも皮膚炎や歯周病、認知症にも関係しています。
動脈硬化
高血糖状態が続くことによって、血液中には糖が大量に増えてしまいます。その結果、血管を守る壁である血管壁に傷が付いてコレステロールがどんどん蓄積され、血管内にはプラークと呼ばれるコレステロールの塊が形成されて動脈硬化となるのです。
動脈硬化が起こると、血流が悪くなり全身のあらゆる箇所に支障をきたしてしまう為、注意したい病気の一つでしょう。
高血圧
高血糖による血圧の上昇は、動脈硬化によるものと深く関係してきます。高血糖状態が続いて血管壁が固くなったり、血液が流れるスペースがどんどん狭くなっていくことが高血圧に繋がる原因となります。高血圧によって起こり得る病気は数多くあることから、健康を保つ為には十分に注意しておきたい病気です。
急性膵炎
急性膵炎とは、消化酵素を分泌している膵臓が上手く働かなくなり、膵臓自身が消化を始めてしまう病気です。暴飲暴食やアルコールの多量摂取などで血糖値が上がった状態が続くと、血糖値をコントロールする為に膵臓からインスリンが分泌されますが、負荷がかかり過ぎる為に炎症を起こしてしまうのです。急性膵炎を防ぐ為には、出来るだけ膵臓への負担を軽減して高血糖にならないように心掛けていきましょう。
肝硬変
肝臓は糖の代謝に関わる役目を持っていることから、血糖と深く関わりがあることが分かります。高血糖状態が続き肝臓の機能低下が起こると肝硬変に陥るリスクが高くなり、また逆に肝硬変から糖尿病へ移行するリスクも高くなってしまうのです。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症(別名:バセドウ病)は、甲状腺の機能(甲状腺ホルモン)が過剰になる病気です。甲状腺ホルモンには新陳代謝を促す働きがあり、その働きに付随して糖新生も促されてしまうのです。
高血糖の対策
血糖値の上昇によって引き起こされる病気には、様々なものがあることが分かりました。なるべく日常の中で気を付けたいところではありますが、高血糖にならないようにするには、何か良い対策はあるのでしょうか?本項では、高血糖の対策について詳しくご紹介していきます。
食生活
血糖値の上昇を防ぐ対策として、まずは食生活の改善が推奨されています。偏った食事や、暴飲暴食などの食べ過ぎは血糖値が上がる大きな要因になります。血糖値を上げない為には、タンパク質と脂質のバランスの良い食事や、野菜を多くとる方法などもあり、普段の食事を少し気を付ける事で、高血糖になる可能性を少しでも減らしていきましょう。
次項では、高血糖を防ぐ為のおすすめの食べ方をご紹介します。
食べ方
血糖値を上げない為には、血糖値を上げにくい食材を選ぶ他に、食べ方でも血糖値を大きく左右する要因となります。おすすめとしては、まず食べる順番を意識してゆっくり糖を吸収していくように心掛けていきましょう。
1、食物繊維の多い野菜やキノコ・海藻など
2、たんぱく質の多い肉や魚など
3、炭水化物系の糖質の多い食べ物
上記の順番で食べ進めていくと、体内ではゆっくりと吸収されていくので、おすすめです。また、食べるときはしっかりとよく噛んで食べると、より糖の吸収を緩やかにすることが出来ます。食事をする際には、ドカ食いや早食いをしないように心掛けましょう。
食材の組み合わせのコツ
私たちが食べる物には、たんぱく質・脂質・炭水化物といった三大栄養素と呼ばれるものに分けられます。血糖値を下げる食材を食べる事もそうですが、食べる組み合わせ一つでも血糖値に少なからず関わってきます。3色食品群のような赤・黄・緑の色を併せて摂取すると良いでしょう。では、どんな食材を組み合わせていけば良いのかという点ですが、和食をイメージしてみると考えやすいかもしれません。例えば、主食・おかず・汁物のように食材・色のバランスを分けている所もポイントです。
朝食の場合の組み合わせ例は、下記の通りです。
・主食…白米、玄米や雑穀米など(黄色の食べ物)
・おかず…焼き魚などタンパク質を含む食材(赤色の食べ物)
・汁物…野菜・キノコ・海藻などを入れたもの(緑色の食べ物)
他にも、血糖値を下げる食材の一つであるオクラやめかぶなど、ネバネバした食材もおすすめです。
適度な運動
肥満になると血糖値を上げる原因にもなるので、運動不足を解消する為にも適度な運動が推奨されています。活動量を増やすことで筋肉が発達して、糖をエネルギーとして消費してくれます。高血糖対策として適度な運動を行う事は、とても有効な手段だと言えるでしょう。しかし、急に過度な運動(無酸素運動)を行うと体を痛めてケガをしてしまう恐れがあるので、注意しましょう。
運動量の目安
運動を行う場合は、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動を、1日60分以上を目安に行う事を推奨されています。連続して行う必要はないので、まずは今より10分でも多く運動するように心掛けてみましょう。
また、運動の強さに関しては、軽く汗ばむ程度やおしゃべりしながら出来る程度をおすすめします。強い負荷が掛かりすぎると、逆に心臓などに負担が掛かりすぎてしんどくなってしまう恐れがあります。なので、慣れるまでは焦らずにゆっくりと行うことをおすすめしています。
まとめ
血糖値が上がると起こる問題や、高血糖による危険についてご紹介しました。
- 高血糖とは
- 血糖値が上がる要因
- 高血糖の対策について
日常の生活に大きく関わりがある血糖値は、私たちの健康に大きく左右する数値でもあります。高血糖による病気を引き起こさない為にも、これらの情報がお役に立てれば嬉しいです。最後までご覧いただき、ありがとうございました。