血圧は上と下があります。上と下はそれぞれ意味がありますが、なかなかわかりにくいものです。そこで、今回はその違いや上と下の差について考えてみます。また、この記事では、上と下の差が大きい場合はどんな時なのか、正常な血圧や上と下の差、血圧を正常に保つためにできること、血圧測定の正しいやり方を紹介します。
目次
血圧の上と下の差が大きい場合とは?
血圧には上と下があるものですが、どんな違いがあるのか知っておきたいものです。ここでは、血圧の上と下の違い、上と下の差について解説します。
血圧の上と下の違い
血圧の上と下の違いを説明します。上は心臓が収縮した時の血圧、下が拡張した時の血圧です。
上の血圧についてのポイントです。
- 心臓がポンプのように収縮して血液を全身に押し出す
- 押し出された血液は、大きな力で一気に動脈へ流れ込む
- 血管にかかる圧力が最高に達した時の数値
- 140mmHg未満が正常の数値
- 血管に弾力がないと、うまく伸び縮みができないため、より大きな圧力がかかる
- 圧力のかかり方が大きければそれだけ血圧が上がる
下の血圧についてです。
- 心臓が拡張して全身から戻ってきた血液を貯めている状態
- 血管に対する圧力が弱まるので最小圧力になる
- 90mmHg未満が正常
- 心臓の拡張期には、血管に弾力があれば膨らんだ大動脈は元に戻る
- 高齢者の場合、血管の弾力性が乏しくなるので大動脈が元に戻りにくい
- 血管に柔軟な動きがないと拡張期に圧力がかかり下の血圧が高くなる
血圧の上と下の差を脈圧という
血圧の上と下の差を脈圧と言います。ここでは脈圧について説明します。
たとえば、上の血圧が130mmHg、下が80mmHgであれば、脈圧は以下のようになります。
130-80=60
こうした計算によって、脈圧は60とわかります。
脈圧は中年期以降に大きくなり、心血管のリスクとして注目されています。脈圧は加齢以外にも、高脂血症や糖尿病などでも増大することが分かっています。脈圧が大きくなることで動脈の柔軟性が低下し、さらに血圧が上がることになると考えられています。
血圧の上と下の差が大きい理由
血圧の上と下の差が大きいのは、大動脈に柔軟性が欠けているからです。
たとえば、上の血圧が160mmHg、下の血圧が60mmHgとしますと、脈圧と呼ばれる上と下の差は160-60=100なので、差が大きいです。
このケースの場合、収縮時にかかる圧力が大きく、拡張時には圧力が少ししかかからないということです。つまり、大動脈の柔軟性が鈍くなっているため、伸縮性が良くない状態です。
加齢によって働きが鈍くなるケースは多いものです。
正常な血圧・上と下の差とはどのくらい?
正常な血圧の範囲や上と下の差がどのくらいなのか説明します。そして、高血圧の範囲、血圧の上と下の差が大きい時の対処法もお伝えします。
正常な血圧の範囲
正常な血圧の範囲は、病院で判定した血圧が上120mmHg未満、下80mmHg未満です。病院と限定しているのは、家庭で測る血圧と病院で測る血圧が異なる場合があるからです。
人によっては、病院で測ると緊張してしまい、普段よりも高くなる場合があります。そのため、あえて病院で測定した値として考えるのです。この場合、家で測れば正常範囲ですが、注意は必要です。
最近では細かく分塁されており、正常範囲だけれども、高めという正常高値血圧の範囲があります。それは上が120~129mmHg、下が80mmHg未満です。
ただし、こちらも病院で測った値です。家庭で測った場合は、そこから5mmHg下げた値が基準となるので参考にしてください。
高血圧の範囲
高血圧の範囲もお伝えします。高血圧も細かく分類されており、Ⅰ度高血圧、Ⅱ度高血圧、ⅲ度高血圧があります。
- Ⅰ度高血圧:上140~159mmHg 下90~99mmHg
- Ⅱ度高血圧:上160~179mmHg 下100~109mmHg
- ⅲ度高血圧:180mmHg以上 下180mmHg以上
(いずれも病院で測定した値)
病院で測った時に上が140mmHg以上、下が90mmHg以上だと高血圧に分類されます。また、上か下のどちらか一方のみが高血圧の基準値というケースでも高血圧と判断します。
血圧は緊張すると上昇するので、家でも何度か測ってみることが大事です。また、もしも血縁者に高血圧の人がいたら、遺伝があるので要注意です。普段の生活習慣に気を付けて血圧が上がらないようにしてください。
正常な血圧の上と下の差
血圧の上と下の差(脈圧)で正常なレベルは、40~60といわれています。たとえば、上が120 下が70でしたら正常です。
要注意なのは、上が156、下が60で脈圧が96のように、上と下の差が大きいケースです。高齢者の場合は大動脈の伸縮が鈍くなっているためと考えられます。
この脈圧の値が大きいほど、普段の生活で血圧が上昇しないように気を付けた方が賢明です。
しかし、測り方にもよるので、自宅で測るのであれば、正しい測り方で測定することが大事です。
上と下の差が大きい時の対処法
上記で取り上げた血圧の上と下の差が大きい場合の対処法は、病院に行くことです。
主治医がおられるのであれば相談してみてください。場合によっては、症状にふさわしい科のある病院を紹介してもらえます。
もしも、特に主治医がいないのであれば、内科か循環器科で相談してみてください。近所で評判の良いクリニックでも、インターネットで探した評判の良い病院でも大丈夫です。
受診して医師の説明を受ける時は、メモをとりながら聞くと、聞き逃しがなく安心です。診察室にはメモ帳などを持って行くのもおすすめです。またはスマホのメモ機能を利用して、ささっとメモを取る方がやりやすいのであれば、それでもOKです。
質問も遠慮なくしてみてください。患者からの質問は、どんなことでもウエルカムです。
正常な血圧や上と下の差を保つためにできること
ここでは、正常な血圧や上と下の差を保つためにできること、病院で様子を見るようにと言われた時などにすべきことを考えてみます。
どれも家でできることばかりです。できることを実践してみてください。
塩分をコントロールする
血圧と塩分は、切っても切れない関係です。食事の際には、塩分にこだわってみてください。
ここでは、塩分の高い食品を塩分量とともに挙げます。普段よく食べる物があったら、控えるようにしてください。
- カップ麺:5.5g
- 袋麺:5.4g
- 梅干し:1.8g
- きゅうりや高菜の漬物:1.2g
- めんたいこ:1.1g
- 塩さば:1.1g
- 白菜の漬物:1.0g
- あじの開き:1,0g
- 塩サケ:0.9g
- 大根の漬物:0.9g
カップ麺やインスタントラーメンは、忙しい時などに食べてしまいそうですが、血圧が気になる場合はやめておくか、スープを残すようにしてください。
漬物や魚の干物も塩分が多いので、お気をつけ下さい。減塩の物も売っていますので、利用するのも一つの方法です。
梅干しはお弁当に入れたいものですが、ご覧のように塩分が高いので、半分にする、減塩物にするなど工夫してご利用ください。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)では成人女性で6.5g未満、成人男性で7.5g未満が目標量とされていますので、分量を計算して1日の塩分量を調整するのもおすすめです。
肥満を避けるためのカロリーコントロール
肥満になると血圧が高くなりやすいです。30代の男性で肥満者とそうでない者を比べたところ高血圧の発症は3.5倍であると言われているなど、多くの研究によって肥満と高血圧の関連は証明されています。
肥満になると血圧をコントロールする自律神経やホルモンの機能が正常に働かなくなります。
また、一般的に肥満の人は食べる量が多いので、それに伴う塩分の過剰摂取から血圧が上がりやすい条件が整います。
そんな肥満を避けるために、食事のカロリーをコントロールします。ご飯の量を心持ち減らして野菜のかさを増やす、おやつのスナック菓子をやめる、菓子パンの朝食をやめるなど、ちょっとした工夫でもカロリーをコントロールできます。
また、お昼の外食をやめて手作り弁当にするのもおすすめです。カロリーのみでなく節約にもなります。
お酒やたばこをやめる
お酒やたばこも血圧に良い影響を与えません。できるならばやめた方が賢明です。
アメリカで行った調査では、28,000人以上の高血圧を持たない女性を対象に10年間追跡したところ、喫煙者の方で高血圧になった割合が高かったというデータがあります。特に1日15本以上の喫煙者でその傾向が強いということです。
お酒は少量であれば、血管を広げて血圧を下げますが、量が多いと血圧を上げる可能性が高いです、また、習慣になればなるほど血圧に良い影響を与えません。やめるのがつらいのであれば、せめて量を減らすようにしたいものです。
また、お酒のおつまみも塩分量が多いので要注意です。たとえば、ホッケの開き200gで塩分量は4.0g、辛子明太子30gで1.7gもあります。
適度な運動
適度な運動も血圧調整に最適です。運動不足は肥満の原因になり、肥満は高血圧の原因になるからです。
おすすめの運動時間はできれば毎日30分以上です。1回に少なくとも10分以上は継続するのがポイントです。10分の運動を3本、15分を2本というやり方でも大丈夫です。
おすすめの運動を下記に挙げます。
- ウォーキング
- ジョギング
- 自転車漕ぎ
- 水中ウォーキング
- 早歩き
- ストレッチやヨガなど
スポーツジムに通う、YouTubeを見ながらマイペースに行う、友人と待ち合わせしてウォーキングに行くなど、始めやすい方法でチャレンジしてください。
ストレスをためない工夫
ストレス下高血圧という言葉があります。病院や家庭で測った通常の血圧は正常でも、職場や家庭内のストレスにさらされている状況で血圧が上がることがあります。昼間高血圧や職場高血圧とも言われますが、その傾向を示す方の多くは肥満や高血圧家族歴(遺伝や家庭環境)があるという特徴があります。
ストレスは高血圧のみならず、どんなことにおいてもNGです。
ストレスをためないためにできることは以下です。
- 家に帰ったら仕事のことを考えない
- 好きなことに取り組む
- 嫌なことを考えない
- 過去を振り返らない
- お風呂に入ってリラックスする
- 時には家事をさぼる
- 無理をしてまでいい人になろうとしない
日頃から血圧を正しく測ろう
血圧を正しく測ることは、健康に気を付けるために必要です。
それには、測りやすい血圧計を用意すること、正しい測り方を覚えることが必要です。ここから詳しく説明していきます。
血圧計を用意する
まずは血圧計を用意します。ただ、血圧計はいろいろな物が売っているので、選び方に気を付けたいものです。以下に選ぶポイントを挙げます。
- 測定タイプが自分に合うか確かめる
- 使いやすい形や大きさか考える
- 手軽にできるか否か
- 電源は何を使うか
- 計測結果の表示が見やすいか
- メモリーを何件残せるか
- 最新式であるかどうか
- 気になるのであれば、口コミもチェックする
正しい血圧の測り方
ここからは、正しい血圧の測り方を紹介します。
- 上腕部で測定する
- 朝であれば、起床後1時間以内に排尿後、服薬の前に行う
- 夜は就寝前に行う
- イスに座って1~2分安静にしてから測る
- 血圧が上がった、下がったと感じた時に測るのも良い参考になる
- 朝晩1回以上は行う
- 医師の指示があれば、従って測る
- 測定値を記録する
- 長期間にわたって行う
家でなんどか測定を繰り返すと慣れてきます。病院に行く緊張して白衣高血圧になる方も家で測ることによって、病院でも緊張せずに測れるようになります。
毎日測ってみて何か感じることや不明に思うことがあったら、医師に相談してみてください。
まとめ
血圧の上と下の差が大きい場合は、収縮と拡張のバランスが悪く、血管の柔軟性が鈍くなっているのかもしれません。考えられる原因は高齢化、動脈硬化などの可能性があります。
脈圧と言われる上と下の差が40~60であれば大丈夫ですが、それよりも大きかったら、病院でみてもらうと安心です。
しかし、測り方にもよっても異なるので、病院や健康診断で測ったものを基準にして下さい。
血圧が高くなったり、上と下の差が大きくなったりしたら、まずは血圧を正常に近づけるように生活習慣の改善を気にしたいものです。
塩分コントロール、カロリーコントロール、お酒やたばこをやめるか量を減らす、適度な運動、ストレスをためないなど、できるだけ工夫してみてください。
また、普段から正しい方法で血圧測定をするのもおすすめです。主なポイントは1~2分安静にして上腕部を固定して測ることです。測定値はきちんとノートに書いておくと後でチェックするために重要です。
このように、血圧の値や上と下の差を気にしながら、日々血圧と向き合うようにしたいものです。医師の診察時には、測定値を書いたノートを見せると正確な診察ができるので強くおすすめします。