皆さんは血圧が気になることはありますか?健康を管理する上でとても大切な指標である血圧ですが、一体いつ計測するのがベストなのだろうと思っておられる方も多いと思います。
この記事では、血圧を測るのに適した時間帯や血圧を測るべき理由、測り方に至るまで、一挙ご紹介します。
目次
なぜ、自宅で血圧を測るのか?
血圧を自宅で測る重要性について知っていますか?決まった時間に自宅で血圧を測ることで、様々な良いメリットがあります。では、どのようなメリットがあるのか、順に見ていきましょう。
日常生活での血圧を把握する事が大切
現在では、「家庭血圧」の重要性が認められており、家庭で血圧を測ることで、血圧治療の継続性の改善や、薬の効き目、その他病気の予防など多大な意義があるということが近年明らかになってきました。そもそも、血圧とは、心臓から送り出された血液が、血管の内壁を押す力のことで、血圧が一定数値より高い状態のことを「高血圧」と呼びます。
高血圧は、またの名を「サイレントキラー」と言います。その理由は、自覚症状がほとんど見られないため、気づかずに放置していると、知らないうちに動脈硬化などを引き起こし、病気を進行させてしまうことがあるためです。
高血圧による動脈硬化は、全身に悪影響を与え、ハイリスクの病気を引き起こしやすくなります。特に、脳や腎臓の中の細い動脈に起こる動脈硬化は細動脈硬化と呼ばれ、進行すると脳出血など重篤な症状を引き起こすことがあるので注意が必要です。
このサイレントキラーである高血圧を予防するために、家庭で定期的に血圧を測定することで、早期に血圧の異常を知ることができ、様々な病気に罹患するリスクを抑えられる利点があります。
決まった時間に毎日測る
毎日、同じ条件で血圧を測ることで、より正確で詳細な血圧のデータを把握することができます。血圧は、1日のうちでも変動が激しいため、毎日決まった時間やタイミングで測ることで、正確な数値を割り出すことができ、そのデータを蓄積することで、様々な異常を数値から推測することに期待が持てます。そのため、決まった時間に毎日測るように推奨されています。
測定値の記録
毎日計測した血圧を記録していくことで、健康管理の目安になり、その記録が医師にとっても重要な診断材料となるため、家庭血圧のデータ化はとても大切な要素です。データを毎日蓄積しておくことで、心筋梗塞や脳卒中などの心血管病の発症を予測できます。また、診察室での血圧に比べて、家庭での血圧は、病気の状態や、高血圧をより多くとらえるということで、脳心血管の発症などを未然に防ぐことが可能であると、最近の研究で明らかになってきました。
同様に、高血圧のリスクの判断に於いても、診察室でのデータと家庭血圧のデータを比較することで、適切な治療方法が考えられるため、早期治療および的確な生活習慣病の指導や薬物治療を可能にします。また、現在治療中の場合は、データを見ることで、治療の効果を確認することにつながり、自ずと健康管理の目安にもなるため、測定値の記録は大変有効です。
病院では把握しにくい状況が見えてくる
病院の診察室などで、普段よりも高い血圧が計測される現象である「白衣高血圧」、病院の診察室での血圧値は正常数値なのに、診察室外で計測した血圧値が高血圧である現象の「仮面高血圧」、朝に血圧が高い現象で、脳卒中や心筋梗塞に繋がりやすい「早朝高血圧」などの病気を診断するための資料として、とても有効です。
治療の手助けになる
服薬治療中の場合、薬の持続時間や効果を評価するための資料となり、数値を元にした治療方針を確立する手助けとなるため、とても有益です。
高血圧のリスクについて
高血圧が続くと、知らず知らずのうちに動脈が硬くなり、更に血管がもろくなる「動脈硬化」という現象が起こり、やがて様々な病気を引き起こす原因となります。具体的にどのような病気が引き起こされるのか、ご紹介していきます。
病名 | 症状 |
脳出血 | 脳の組織自体に出血が起こる実質内出血や、脳の表面で出血が起こるくも膜下出血があります。 |
脳梗塞 | 血管が詰まることから発症します。アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳梗栓症などがあります。 |
心不全 | 心臓の血管に負担がかかったり、機能的な異常が生じることで、息切れやむくみがおこり、結果、生命を縮めることになります。 |
狭心症 | 動脈硬化などによって心臓の血管が狭くなり、血液の流れが悪化したした状態です。なんらかの動作中に、胸を圧迫するような痛みが繰り返し生じますが、数分以内におさまります。 |
心筋梗塞 | 動脈硬化によって心臓の血管に血栓ができて血管が塞がってしまう状態です。血液の流れがないことで心臓の細胞が壊れ、胸に激しい痛みを生じ、仮に心臓の血管が一瞬で詰まると死に至ることもあります。 |
腎硬化症 | 血液を濾過して尿を作り出している腎臓が、高血圧により細動脈の硬化が進んだことで腎臓も硬化してしまう病気です。 |
大動脈解離 | 動脈硬化が進行することで、大動脈が裂けてしまう病気です。 |
血圧を測る時間について
血圧を家庭で測る場合、いつ測れば良いといった決まりはあるのでしょうか?一般的に、家庭血圧の測定は、朝と夜の1日2回計測することが推奨されています。血圧は、通常睡眠中は低く、朝になると起床前から徐々に上昇し、昼間の活動量が多い時間帯には高くなるのが普通です。そして、夕方になって活動量が低下してくると、血圧もそれに合わせて低下し、睡眠中は更に低くなります。また、運動や食事、感情の変化などの外的要因でも、血圧の変動が見られることもあるため、少し高かったくらいで、それを「高血圧」と決めるのは間違いです。
それでは、朝に測る場合と、夜に測る場合について見ていきましょう。
朝に測る場合
起床後、1時間以内で、トイレに行った後および朝食をとる前がベストなタイミングです。血圧の薬を飲んでいる人は、薬を飲む前に測るようにしてください。椅子に座った状態で、1~2分安静にしてから測ります。
夜に測る場合
夜は、寝る前の時間帯で、椅子に座って1~2分安静にしてからの測定が推奨されています。入浴や飲酒、食事の直後は避けるようにしてください。
次に、朝の計測、夜の計測ともに共通している事柄をご紹介したいと思います。
正しい血圧の測り方
血圧を正しく測るには、どのような点に注意しながら行えば良いのでしょう?血圧計は、正しい方法で計測しないと、正確な数値を示してくれません。ですから、必ず正しい姿勢や方法で、毎日血圧を測定するようにしてください。
正しくカフを装着する
様々な血圧計が世の中には出回っていますが、ベルト(カフ)を上腕に巻いて計測するタイプが、一番正確です。ベルト(カフ)は、薄手のシャツを着ている場合は、その上から巻いても大丈夫です。厚手の服を着ている場合は、必ず脱ぐか、上腕部分まで服を上げてから巻くようにしてください。
まず、手のひらを上に向け、力を抜きます。この状態で1~2分待ち、落ち着いてから計測をはじめます。ベルトの高さは心臓の位置と同じかどうかを確認し、腕はテーブルの上に置き、計測ボタンを押してください。測定中は会話もせず、じっとするようにしてください。
姿勢や部位について
次に、測定中の姿勢について見ていきましょう。
測定時は、背もたれのある椅子に脚を組まずに静かに座ります。脚を組んだり胡坐をかいたりすると、血流に影響が出て、血圧が上がりやすくなり、正確な数値を測ることが出来ないため、正しい姿勢を保つようにしてください。
測定時に注意すべきこと
血圧を測定する前には、喫煙・飲酒・カフェインの摂取を控え、測定直前には数分間安静にしておくことが必要です。また、測定をしているときには、静かな環境で会話をせず、足を組むことをしないことが大切です。
血圧を測る回数
血圧は、1回の測定で2度測ることが大切です。1回目と2回目の測定の間は、1~2分間を開け、その平均値を求めることで血圧の評価を行います。往々にしてどの年代でも、2回目の測定の方が低い値が出ることが多く、これは1回目に高い測定値が出るため、2回目は低く感じるという「中心への回帰」という現象によるものです。
1回目と2回目の測定の差が、人によっては10㎜Hgほどかそれ以上の数値がでる場合があるので、必ず2回測定を守るようにしてください。
血圧計について
血圧計には様々なタイプのものがあります。昔はよく使われていた水銀血圧計は、日本では2013年に「水銀に関する水俣条約」が最終確認され、2017年に発効されたことで、2021年以降の製造や輸出入は禁止になりました。
水銀血圧計に代わる血圧計
では、2021年以降使用できる血圧計はどのようなタイプのものが推奨されるようになったのでしょう?
「高血圧治療ガイドライン2019」での解説より、医療機関では、国内で正式に販売認証されている「上腕式医療用電子血圧計」を使用し、「ばね式アネロイド血圧計」は衝撃に弱いため推奨できないとされています。また、血圧計を手に入れる際は、必ず日本高血圧学会のウェブサイトなどで、その血圧計の臨床評価の状況を調べ、その結果を見て購入するように推奨されています。
家庭での血圧測定
一般家庭で血圧を測定する場合も、「上腕カフ・オシロメトリック法」が使われている「上腕血圧計」を使用することが大切でとされています。なぜ上腕血圧計が推奨されるかというと、聴診法との較差(血圧の値の差)が5mmHgであるからです。
家庭で血圧を測定する場合でも、1機会に2回測定を行い、どちらの結果も記録することは鉄則ですが、市販されている血圧手帳は、往々にして一回分しか記録できないタイプのものが多いため、2回の記録カ所がある日本高血圧協会が発行している血圧手帳を使用することをオススメします。
血圧測定の歴史
血圧の測定の歴史として、1733年にイギリスの牧師ステッフェン・ヘールズ(1677〜1761)がマウスを使って血圧測定を行ったのが世界初だといわれています。
そして今から約100年前の1905年、ロシアの軍医ニコライ・コロトコフがカフ(腕帯)で上腕の動脈を圧迫し、その後減圧した時に生じる血管音を聴診器で聴き取りながら血圧を測定する方法を発見しました。
この方式が、最高血圧と最低血圧を客観的に測定した初めての方法である「コロトコフ法」の誕生でした。現在でも一部の病院で行われている水銀による血圧の測定方法がこれに当たります。
その後、1973年には国内初の自動血圧計が立石電機(現オムロン)から発売され、誰でも簡単に家庭で血圧が測定できるようになりました。
毎日血圧を測る習慣が大事
血圧は、1日のうちでも時間帯や活動状況により常に変動しています。また、気温にも影響を受けやすく、寒い時期は上昇しやすい特徴もあります。そのため、毎日定期的に血圧を測り、メモすることで、長期的な血圧の上がり下がりの変化を知ることができます。これは、病気が潜んでいる場合に、早期発見につながるばかりではなく、より確実な診断を医師が行えることから、毎日血圧を測る習慣を身に付けることは、大変有意義です。
血圧は、必ず2回測るようにし、その平均をその日そのタイミングでの血圧値とすることで、より確実な血圧の数値を割り出すことが出来ます。自宅で測定した血圧値は全てメモし、通院するたびに必ず医師に診てもらうようにしてください。なお、家庭血圧では、朝・夜それぞれの平均値が135/85㎜Hg以上であれば、高血圧と分類されるため、この数値が出た場合は、なるべく早く病院に診察に行くように心がけることで、様々な病気の早期発見につながる場合が多々あります。
まとめ
この記事では、血圧を測ることの重要性や血圧の測定方法などについてご紹介しましたが、いかがでしたか?血圧は、1日のうちでも変化がありますし、気温や心境などの外的変化によっても変化するものです。
とはいえ、気づかないうちに病気が進行していては、取り返しのつかない事態になることもありますので、常日頃から毎日定期的に血圧を測定し、不測の事態に備えてデータを蓄積するようにしてください。