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2023/04/27

食後1時間の血糖値について〜食後血糖値の上昇は緩やかに〜

血糖値が高いと健康において様々なリスクが生まれると言われています。しかし血糖値は、血圧ほど測定する機会が多くないこともあり、無頓着になりがちです。
今回は、空腹時血糖値と同様に把握しておきたい食後1時間の血糖値について解説していきます。また、食後の血糖値が必要以上に急上昇するために起こるリスクと、そうならないように気を付けることをまとめました。

食後血糖値

ご自身の血糖値をご存じでしょうか?健康診断では、血糖値を食事抜きの状態(空腹時)で測定することがほとんどです。空腹時血糖値が正常であることももちろん大切ですが、自分の健康リスクを血糖値から判断するには、食後血糖値も重要です。空腹時には正常でも、食後には隠れた高血糖があるかもしれないからです。おおよそ一定に保たれている空腹時血糖とは違い、食後血糖値は食べたものの影響を大きく受けます。

血糖値とは

まず、血糖値とは何でしょうか?血糖値とは「血中のブドウ糖濃度」を示した数値です。
消化吸収された食べ物は細胞のエネルギーになるようブドウ糖に分解され、血液にのって全細胞へと運ばれます。そのため、食事などをすると血中のブドウ糖濃度が必然的に上がります。

単位は mg/dlで、100mlの血液に何mgのブドウ糖が含まれているかを表しています。正常値は空腹時で約70~100mg/dlとされています。

血糖値のバランスを保つ2種類のホルモンについて

血糖値は、1日のなかで変動を繰り返します。食べると血糖値は高くなり、血中の糖がエネルギーとして使われるため細胞に取り込まれることで下がります。

そうした変動のなかで血糖値は、上がりすぎないようにするホルモンと、下がりすぎないようにするホルモンの2種類で、正常値になるよう調整されます。血糖値をあげるホルモンは複数種類ありますが、血糖値を下げるホルモンは、すい臓から分泌されるインスリンのみです。

変動の幅が少ないことが血管に負担をかけない理想とされていますが、血糖値を下げることはインスリンのみに頼っているため、うまくインスリンが働かない状況になると、高血糖状態になってしまいます。

食後なぜ血糖値は上がる?

食事をすると糖質は消化吸収されブドウ糖になります。ブドウ糖をエネルギーとして使うために体の細胞たちが求めているので、血液にのせて全身の隅々まで運びます。
そうなると血中には糖が空腹時よりも存在するのは当然で、血糖値が上がった状態になります。

血糖値をあげるのは食べ物に含まれる糖質です。糖質は、お菓子など甘いものに限らず、食品のほとんどに含まれています。
例えば、ごはんやうどんなどの炭水化物に多く含まれています。
炭水化物は胃や腸で分解され、そのうち糖質は最終的にブドウ糖となります。食事は炭水化物中心になることが多いため、食後には血糖値上昇が顕著になります。

食後血糖値の推移

では、食事をすると、どのくらい血糖値は上昇し、正常値に戻っていくのでしょうか。

前述したように、空腹状態(空腹時血糖正常値)で食事をしたものがブドウ糖に分解されて血液で運ばれ(血糖値高)、それが細胞に取り込まれる(空腹時血糖正常値)まで、血糖値は変動します。

血糖値は、食べた糖質がすべてブドウ糖に分解され血中にはいるまで上がり続け、インスリンが働いてブドウ糖を細胞に取り込んでしまうと血糖値は下がっていきます。

つまり、どこまで上がるかは食べたものとインスリンの働きが影響します。だいたい食べ始めて上がり始めた血糖値はおよそ1時間後にピークに達し、およそ2時間後に食前と変わらない値に戻っていきます。

食後1時間の正常血糖値

自身の健康リスクを考えるなら、空腹時血糖値だけでなく、血糖値が一番高いときも知る必要があります。

血糖値が一番高い状態になるのは、「食べた糖質がほぼ全てブドウ糖に分解されて血中にある」ときです。

つまり、食事直後はまだブドウ糖に分解されてないので、たいして上がっていないことが予想されます。
分解されるには、食べたものによるのですが、目安として食後1時間とされています。
この時の正常値は、180mg/dl未満とされています。

食後高血糖とは

食後高血糖とは、正常に戻ってきているはずの2時間たっても、血糖値が140mg/dl以上の場合を指します。

食後の血糖値は、食べたものとインスリンの働きによると述べました。異常に糖質の多いものを食べなければインスリンが正常に働くことでブドウ糖を処理し、2時間たてば問題なく正常範囲内に収まります。

しかし、インスリンの分泌が追いつかないほどたくさん食べる、またはインスリンがききづらい状態になっている場合、ブドウ糖の処理が追い付かず、血中のブドウ糖濃度が上がったまま正常値まで下がらなくなります。

空腹時血糖とは

健康診断で測定される空腹時血糖は、「余分な糖質が血中にない」状態の血糖値です。
ホルモンが正常に働いていると、ほぼ一定の値で保たれています。
空腹時血糖は、食べたものに影響を受けていないのでインスリンをはじめとした血糖値調整ホルモンが正しく働いているかを見極める一つの材料となります。

測定は、たくさんの糖質があると取り込みに時間がかかり2~3時間では下がり切っていない可能性もあるため、一般的には朝食をとっていない状態(10〜14時間絶食後)で午前中採血をします。

ヘモグロビンA1cとは

検査項目で、気になる食後血糖値が正常であるのかの判断の材料になるものがあります。それがヘモグロビンA1cです。これは直近1~3ヵ月の血糖値の状態を反映させて数値化したものです。

詳しく言うと糖化したヘモグロビンが血中にどれくらいあるかを示した割合を示しています。血中にブドウ糖がたくさんあるとその糖と血液成分であるヘモグロビンが結合します。糖化したヘモグロビンの値が高くなれば、それだけ血糖値が高い状態で存在した証拠になるわけです。

空腹時血糖が正常なのにも関わらずこれが高いと、食後高血糖の状態が続いていることが想像できます。

食後にすぐ眠るのは良くない?

食後はすぐに動くと消化によくありません。適度な昼寝は体に良いというデータもあるので、寝ること自体は悪いことではありません。しかし寝不足でもないのに食後すぐ眠くなる、というのは実はよくないサインが隠れている可能性があります。

インスリンが大量に分泌され血糖値が乱高下したとき、人は眠気を感じることがあるようです。急激に下がったということは、食後高血糖が起こっていた可能性があるかもしれません。

食事と血糖値の深い関係性

今まで見てきたように、食事と血糖値は密接に関係しています。
食べるもので特に食後血糖値は影響を受け上昇します。理想の血糖値変動は、正常範囲内に収まるように緩やかな曲線を描くものです。
血糖値の変動が大きいと血管硬化が進行する可能性があり、また高血糖状態が続くとインスリンの効きが悪くなる原因にもなります。
理想的な変動をするためには血糖値に影響を与えやすい食べ物を把握し、上手に食べることが必要となります。

血糖値が上がりやすい食べ物

食べたもののうち糖質は、ブドウ糖に分解されて初めて血中に運ばれるため、よりブドウ糖に近い食べ物を食べると血糖値は上がりやすくなります。
糖質であることがわかりやすいものは、果物やお菓子などの甘さを感じるものです。砂糖がたくさん含まれているものは血糖値が即時に上がります。
逆にすぐ脳にエネルギーを送りたい受験生や低血糖状態でふらふらする人には、ブドウ糖そのものや甘いチョコレートなどを摂取すると効果があります。
その他の主な栄養素と血糖値の関係を次に見ていきましょう。

炭水化物と血糖値

炭水化物は、食物繊維と糖質でできています。
炭水化物のうちエネルギーとして利用されるのは、ほぼ糖質と考えて差し支えありません。血糖値の上昇に直接的にかかわってきます。
炭水化物が多く含まれる食材としては、ご飯、パン、麺類などの穀類やいもなどのでん粉類です。
市販の食品の栄養成分表示を確認し、もし糖質がなくても炭水化物が含まれていれば、血糖値をあげる要因となるので覚えておきましょう。

タンパク質と血糖値

タンパク質は血糖値にほぼ影響しません。タンパク質は分解されてもブドウ糖にはならないからです。しかし、「タンパク源であるお肉を食べても血糖値は上がらない」は間違いです。そもそも豚肉にも炭水化物が含まれており、豚肉を味付けしている調味料にも糖質や炭水化物は含まれていることがあるからです。
タンパク質という栄養素は血糖値をあげないけれど、タンパク質の多い食材が血糖値をあげないわけではないことを覚えておきましょう。
しかし、含まれている量が微量であればもちろん血糖値上昇にそれほど影響しません。またブドウ糖に分解されるまでにも時間がかかるため急激に上昇することも少ないでしょう。

食物繊維と血糖値

血糖値のあがりにくい食べ物のポイントとして、食物繊維が多く含まれていることです。特に水溶性食物繊維は食事から摂取した糖の吸収が穏やかになるよう作用し、血糖値の急激な上昇を抑える効果があると報告されています。水溶性食物繊維である難消化性デキストリンは、消費者庁により特定保健用食品(トクホ)の関与成分としても定められています。

食物繊維が豊富な食事とは?

この水溶性食物繊維が多く含まれた食材を食べることが、食後の血糖値上昇を抑えることにつながるといえます。では豊富な食品とはいったいどんなものがあるのでしょうか。

食品水溶性食物繊維量
大麦(米粒麦・乾)6.0g
さつまいも(蒸し切干)2.4g
干ししいたけ2.7g
納豆(糸引き納豆)2.3g
干しいちじく、干しプルーン3.4g
茹でごぼう2.7g

※出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)、可食部100g当たり

食物繊維から食べるようにしよう

食物繊維は、ごはんなどの糖質をとる前に摂取すると、血糖値の上昇を抑える効果が顕著になります。食事を取る際には意識して食物繊維の多い食材から箸をつけるようにしてみましょう。あるいは、日頃の食物繊維を手軽に補うことができるサプリメントも数多く販売されているので、活用するのもよいでしょう。

食後の血糖値が急激に変動すると

食後高血糖も気を付けなければなりませんが、近年注目されているのが急激な血糖値変動です。
血糖値が急激に上昇する、下降することで、血管に負担がかかり、硬化してしまうことが危惧されています。

肥満の原因になる

血糖値があがると、下げるためのホルモンであるインスリンが必死に働きます。
インスリンはブドウ糖を細胞に取り込み、グリコーゲンの合成を促進します。グリコーゲンは貯蔵されるため筋肉や肝臓に運ばれますが、運動などをするとエネルギーとして消化されていきます。
しかし、グリコーゲンは使われないと脂肪となり長く貯蔵されてしまいます。
インスリンは中性脂肪の合成も促進するため、たくさんのインスリンが分泌されることは脂肪を溜め込む肥満につながります。

インスリンの過剰分泌

高血糖が続き、インスリンがたくさん出ると、内臓脂肪も貯まります。そうすると、インスリンの作用が効きづらいという状況が生まれます。これをインスリン抵抗性といいます。
インスリン抵抗性があると、血糖値が下がりにくくなるため、さらにすい臓が頑張り、インスリンを過剰に分泌します。
過剰に分泌されることが続くと分泌機能が低下し、インスリン不足により高血糖が続くようになってしまいます。

糖尿病の発症につながる

インスリン抵抗性が高まり、血糖値が正常値まで下がらなくなってしまったら糖尿病と診断されることにつながります。
糖尿病にはこの他にもインスリン分泌低下によって発症することがあります。分泌の低下の原因としては遺伝や加齢、自己免疫疾患によってすい臓が機能しなくなることがあげられます。
自己免疫疾患による糖尿病は1型糖尿病と呼ばれ、食べ物や肥満が原因ではなく小児での発症も数多くあります。
それ以外は2型と呼ばれ、多くの場合はインスリン分泌低下とインスリン抵抗性が合わさって発症します。

血糖値スパイク

血糖値が急激に高くあがる、またその後急降下し、折れ線グラフで変動を示すと尖った釘状(スパイク)になることを、血糖値スパイクといいます。
これは空腹時血糖を測定しても正常値であるため、異常を把握しにくいという特徴があります。また急激に上下するため、高血糖である時間自体は長くないこともあるという厄介な面もあります。
しかし、前述したとおり、急激な血糖値の変化は血管によくなく、繰り返していると、糖尿病発症や動脈硬化の危険性が増していきます。
血糖値スパイクが起こらないようにすることが、とても大切なのです。

食後の血糖値を緩やかにする方法

食後の高血糖、血糖値スパイクをなくし、穏やかな変動を目指すことが、大切な健康維持のポイントです。では、具体的にどういったことに気を付けるべきなのでしょうか。

血糖値が上がりやすい食べ物を控えめに

まずは、血糖値がすぐに上がりやすい食べ物を大量にとらないことです。上がりやすいのは糖質です。糖質そのものはブドウ糖に簡単に分解され、一気に血中のブトウ糖濃度が上がります。菓子類や糖分の多いジュースなどを控えるようにしましょう。また、お菓子だけで食事を済ませる、寝る前や運動する予定のない日に甘いものも大量に食べるなどを習慣化しないよう心掛けるようにしましょう。

炭水化物を摂りすぎないようにする

炭水化物は食物繊維と糖質から成り立っていて、ほとんどの部分が糖質です。お菓子でないからと安心し、炭水化物中心の食事を毎回とっていると、高血糖となる心配があります。炭水化物は体に必要な栄養素であるため、排除するのはよくないことです。しかし、炭水化物主体である丼もの、うどんやラーメン、ピザのみで食事を済ませてしまうことは避けましょう。

水分をしっかりとる

血糖値は水分が少なくても上がります。血糖値は血中にあるブドウ糖の割合なので、血液が少ない状態だと、糖の量がいつも通りであっても血糖値は上がるのです。
また、最近の研究で水分をとる習慣のある人は高血糖になるリスクが低いとの報告も上がっています。意識して水分をとるようにしておきましょう。

しっかり噛んで食べる

あとはしっかり噛んで食べるようにしましょう。食事に時間をかけるのです。
早食いは血糖値によくありません。なぜなら、早く食べると食べたものが一気にブドウ糖に分解されて一度にたくさんのインスリンが必要となるため処理が追い付かないのです。ゆっくり食べれば時間差でブドウ糖が血液に運ばれてくるため、インスリンが余裕をもって処理でき、結果140mg/dlを超えるような高血糖となる瞬間がなくなります。
またよく噛むことで唾液がたくさん出て、食べ物(特に食物繊維)をゲル化します。ゲル化によって粘度が高くなると、糖の吸収がゆっくりになることが報告されています。

食べる順番を意識する

食べる順番も意識しましょう。血糖値が上がりやすい炭水化物を先に食べるのではなく、上昇を穏やかにする食物繊維を多く含んだものを先に食べるとよいでしょう。
野菜、汁物の次に肉を食べ、炭水化物であるごはんやパンを最後に食べます。ある程度量のある食物繊維をとる必要があり、なるべく食物繊維の多いものを選択して食べるようにするとよいでしょう。そうしたちょっとした工夫により食後の高血糖が防げます。

温かいごはんより冷たいごはんを食べる

実は、温かいごはんと冷たいごはんでは、血糖値の上昇に違いがあることがわかっています。
冷たいごはんのほうが血糖値があがりにくいのです。なぜなら、炭水化物のデンプンは、冷えた状態では小腸内で消化されないレジスタントスターチになります。これが食物繊維と似た作用をすると言われています。
レジスタントスターチの効果に関しては近年注目度が高まっており、新しい研究結果にも今後期待したいものです。

まとめ

血糖値は、健康診断で測定する空腹時血糖値、ヘモグロビンA1cだけでは完全に異常がないかは判断は難しいものです。食後高血糖になっている可能性もあるからです。そのリスクをしっかり理解して、なるべく血糖値をあげない生活習慣を心がけ、機会があれば食後1時間後や2時間後の血糖値を測定して糖尿病や動脈硬化のリスクを下げていきましょう。

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