尿酸値が高いと、高尿酸血症や通風などの疾患を引き起こすリスクが非常に高くなります。痛風発作は、風が吹いても痛いと言われるほどの激痛を伴い、日常生活にも影響がある病気です。健康診断などで尿酸値が高いと指摘された際は、専門の医師などに相談するようにしてください。それと合わせて、尿酸値は、普段の生活習慣や食習慣に注意することで、対策をとることも可能となります。今回は、尿酸値を下げる効果が期待できる飲み物について紹介します。
目次
尿酸値を下げるのに牛乳が効果的な理由
尿酸値を下げるために牛乳を飲むと良いという話を聞いたことがありますか?実は牛乳をはじめとする乳製品をよく摂っていた方は、痛風の発生率が低いという話は、12年間に及ぶ大規模な観察研究によって確認されています。もちろん誰にでも効果があるとは言いきれませんが、尿酸値を下げたいと思っている方には、聞き逃せない情報ではないでしょうか。
ではなぜ牛乳が尿酸値を下げるのに効果があると考えられているのかを解説します。牛乳や乳製品には、たんぱく質の一種・カゼインが含まれています。このカゼインが尿酸の排泄を増やすと報告されているからです。しかしそもそもなぜ尿酸値が高いとだめなのでしょうか?
尿酸値についての基本知識
尿酸とは、肝臓で作られる代謝物の1つです。人が摂取した食べ物や飲み物に含まれているプリン体が、肝臓で分解され、尿酸となります。そして一定量(約1,200mg)が体内に蓄積され、それを超えると尿や便として体外に排出されます。しかし、プリン体を多く含む食べ物・飲み物の摂り過ぎやほかの病気が原因で尿酸の排出量が減ると、体内に蓄積される尿酸の量が増えてしまいます。結果的に血中の尿酸値が上昇してしまうというわけです。尿酸自体には、人の体を守る働きもあるのですが、必要以上に増えてしまうと体に様々な悪影響をもたらしてしまいます。
尿酸値の基準値は?
血中尿酸値は、7.0mg/dlまでが基準値内で、これを超えると「高尿酸血症」と呼ばれます。しかし、ある日突然尿酸値が上昇するわけではありません。普段の生活の中で尿酸値が高くなる原因があり、それが長期間にわたることで少しずつ上がっているのです。ですから、尿酸値を適正に保つ生活習慣を身につけるよう気をつけましょう。
尿酸値が上昇すると尿酸が結晶となり、関節や腎臓などに溜まり始めます。そして尿酸が関節に溜まると痛風発作が起きてしまうのです。そして尿酸が腎臓に溜まると腎臓の働きが悪くなる通風腎という状態になり、腎臓の炎症が起こりやすくなります。すると腎臓の働きが悪くなる、どんどん尿酸の排出量が減るという悪循環に陥る恐れがあります。どんどんと腎臓の働きが落ちると最悪の場合腎不全になり、透析を受けなければならなくなるかもしれません。もし尿酸が結晶化して尿路に溜まると尿路結石を発症するリスクが高まるのです。尿路結石は、痛風発作に勝るとも劣らない激痛を起こします。
プリン体って?
プリン体は、動物や植物などすべての生き物の中に存在している物質で、細胞の核酸を構成している主成分です。プリン体は、生き物の生命を維持するためには不可欠な物質で、身体を動かす・内臓を正常に働かせるためのエネルギー源でもあり、体内でも作られています。ただ、いくら重要な物質でも多すぎると体に悪影響を与えることがあるので、プリン体を多く含む食べ物や飲み物を食べすぎることのないように注意してください。参考までにプリン体を多く含む主な食品を紹介しておきます。食品100gあたり300mg以上なら非常に多いとされ、以下200~300mgで多い、50~100mgは少ない、50mg以下で極めて少ないと分類されています。
食品名 | プリン体含有量mg/100g |
---|---|
干しシイタケ | 379.5 |
豚レバー | 284.8 |
牛レバー | 219.8 |
鶏レバー | 312.2 |
カツオ | 211.4 |
マイワシ | 210.4 |
干物全般 | 208~746 |
スルメイカ | 186.8 |
車エビ | 195.3 |
大正えび | 273.2 |
オキアミ | 225.7 |
カキ | 184.5 |
イサキ白子 | 305.5 |
あんこう肝(酒蒸し) | 399.2 |
魚の干物の多くは、生魚よりもプリン体が多く含まれており、特に煮干しは746.1mg/100gも含まれています。その他、健康食品のクロレラには3182.7mg、ローヤルゼリーは403.4mg、ビール酵母には2995.7mg、リボ拡散のDNA/RNAでは21493.6mgものプリン体が含まれています。健康のために摂っている健康食品がかえって尿酸値上昇の一因になっている場合もありますので、サプリメントなどを摂るときには、成分を確認しましょう。
このように食品のプリン体含有量については確認するに越したことはありません。ただプリン体は全体の7~8割が体内で生成され、残りが食品から摂取している分だと言われています。ですので、尿酸値を下げるためには、プリン体を体内に取り込む量を減らすことと同時に、尿酸を体外へ排出しやすくすることが重要なのです。ではどうすれば、尿酸を体外に出すことができるのでしょうか。
尿酸値を下げるにはこまめな水分補給が大切
尿酸値を下げるために大切なことは、プリン体や果糖を多く含む食品を控えることと、食べ過ぎに注意すること、そして十分な水分を摂ることです。尿酸は、尿として排出されますので、水分を多くとるほど尿酸が排出されやすくなります。尿酸値が高めな方は、まず充分な水分を取るように心がけてください。腎臓や心臓の病気で水分制限を受けている以外の健康の方は、1日に2ℓを目安に水分を取ってください。特に夏は、汗をかきやすく、どうしても水分補給が足りなくなりますので、水分は多めに摂りましょう。摂り方は、コップ1杯程度を何回にも分けて飲む方法がおすすめです。水の他にお茶などでも問題ありませんが、糖分が含まれていないものにしてください。
尿酸値を下げるのにおすすめの飲み物
尿酸値を下げる働きが期待できるおすすめの飲み物には、前述の牛乳・乳製品のほか、コーヒーや水などがあります。それぞれおすすめの理由について説明しましょう。
牛乳・乳製品
重複しますが、牛乳・乳製品が尿酸値を下げるためにおすすめする理由は、牛乳・乳製品に含まれるカゼインに尿酸の排泄を促進する働きがあるためです。そのうえ、牛乳・乳製品にはプリン体が含まれていないか、含まれていてもごく僅かですので、尿酸値を下げるためには、最適の飲み物だと言えます。飲む量は、1日にコップ1杯(約240㎖)以上を目安にしてください。ただ乳脂肪を摂り過ぎて肥満になっては意味がありません。気になる方は、低脂肪や無脂肪の牛乳・乳製品を飲みましょう。もし牛乳が苦手な場合は、飲むヨーグルトを試してください。
コーヒー
コーヒーをよく飲む人の方が、ほとんど飲まない人より痛風発作の発症リスクが低いということはわかっています。アメリカで行われた約4万6千人の痛風の経験が無い男性を対象に行われた12年間に及ぶ調査でわかりました。
コーヒーが痛風発症のリスクを下げるという、その理由の一つとして考えられているのは、コーヒーにはピロガロールという成分が含まれているからです。ピロガロールは、プリン体の代謝に関わるキサンチンオキシダーゼ酵素(XO)の働きを阻害する働きがあるのです。ピロガロールはコーヒー豆の焙煎の深さに影響されにくい熱に安定した成分と考えられています。
ただし、コーヒーとして飲む状態では、他の成分によるXO促進効果があるので、ピロガロールの効果は薄まってしまうこともわかりました。それでもコーヒーは尿酸値対策として可能性のある飲み物なので日常的に摂取することが良いかもしれません。
もしコーヒーが苦手なら、牛乳と混ぜてコーヒー牛乳にしてみてはいかがでしょう。ただし、砂糖は入れないでください。砂糖などに含まれる果糖は、プリン体の分解を促進するために尿酸値を上昇させてしまう可能性があるためです。どうぞ気を付けてください。
水
水は、もちろん尿酸値を下げるためには有効な飲み物です。糖分など余計な成分も入っていませんし、安心して飲めます。何より一番手軽です。1日2~2.5リットルの摂取を目標としましょう。ただ、水だけですとどうしても飽きてしまうので、ここまで紹介してきたほかの飲み物と合わせた水分補給をおすすめします。
尿酸値を下げるのにおすすめしない飲み物
尿酸値を下げるために、出来るだけ避けた方が良い飲み物には、次のようなものがあります。
アルコール
アルコールが尿酸値を上昇させる理由は3つです。アルコールは体内のアデノシン三リン酸(ATP)の分解をすすめてしまいます。ATPが分解されるとプリン体が増えてその後尿酸として蓄積するのです。次に、アルコールの摂取が腎機能を低下させるので、その影響で尿酸の排出が低下し体内に蓄積されていきます。また、アルコールを飲むときは、プリン体を多く含む食べ物などを一緒に摂ってしまいがちです。食べ過ぎになるのもリスクでしょう。特にビールは、プリン体を多く含んでいるうえ、エネルギーも高いので、出来るだけ控えた方が良いでしょう。
ビールに次いでプリン体を多く含むアルコールは、日本酒です。ワインやウィスキーなどにはプリン体の量が少ないので、尿酸値が気になる方は、ビール・日本酒よりワイン・ウィスキーなどを飲む方がおすすめです。1日の飲酒量の目安としては、ビール中瓶500ml、日本酒1合、ウィスキーダブル1杯(60ml)、ワイングラス1杯(200ml)までにすると良いとされています。尿酸値を上昇させずにお酒を楽しむなら、飲む種類を選び、おつまみはプリン体の多い食品を避け、週に2回程度の「休肝日」を設けるよう配慮してください。
清涼飲料水
清涼飲料水には、果糖の含まれる商品が多くあります。果物にも多く含まれる果糖は、プリン体の合成を促進する働きを持っていることから、尿酸が増加する可能性がありますので、尿酸値を下げたいと考えている方には、砂糖などの糖類が入っている清涼飲料水やスポーツドリンクはお勧めできません。
尿酸値を下げるには適度な運動も必要
尿酸値を下げるためには、飲食だけでなく、日常の生活習慣にも注意しなければなりません。基本的には、バランスのとれた食事を摂り、適度な運動を行い、肥満に気を付ける生活を心がけることが大切です。
適度な運動としておすすめなのは、週3回程度のウォーキングや軽めのジョギング、水泳、縄跳びなどの有酸素運動です。ストレッチやヨガなどもおすすめです。ただし、無酸素運動のような強い運動は急激に尿酸値を上げてしまうことがあるので注意が必要です。激しい運動で生じる乳酸は、腎臓から排出される尿酸の量を減らしてしまいます。せっかく運動しても尿酸を増やしてしまうので、無理なく適度な運動を心がけましょう。
今までほとんど運動をしていなかった方の場合は、まず散歩から始めましょう。しっかりと腕を振り、姿勢よく歩く、少しずつ距離を延ばす、慣れてきたらやや息がはずむくらいの速度でウォーキングをしてください。この時に気を付けることは、決して無理をしないことです。呼吸が苦しくなるほどの速さではなく、少し息がはずみ、汗がうっすらと出るくらいの速度に押さえてください。
まとめ
尿酸値を下げるためには、尿酸を排出する・尿酸を作らないことが大切です。特に尿酸を排出するには、何よりも水分を摂るという、とても単純で簡単なことが最も効果的だと言われています。これは、今すぐにでも始められる尿酸値対策です。この記事を読み終わったら、まず1杯の水やお茶を飲み、最低2ℓ以上の水分補給を習慣にしてみてください。